・プロトテカ性乳房炎の分子疫学調査 プロトテカ感染牛乳汁160、バルク乳285、腸管内糞便821、飲料水478、他動物糞便4、体液(ルーメン、全血、尿)12、環境(ミルカー、牛床、飼料)89の計1849検体から分離および遺伝子解析を完了した。結果、乳汁サンプルのほとんどが病原遺伝子型とされるgenotype 2(gt2)と同定された。一方、環境サンプルは非病原遺伝子型とされるgenotype 1(gt1)が約70%、gt2が約30%と同定された。また、子牛糞便中からもgt2が検出された。以上から、感染源は腸管内糞便および乳汁であることが示唆され、それらからの汚染により拡大すること可能性が考えられた。また、子牛糞便から検出されたことから、殺藻処理を行っていない初乳、母乳からの感染が示唆された。今回の大規模疫学調査により、本症の感染源、感染経路が初めて提示された。 ・薬剤感受性試験および試作ワクチンによる防除の検討 使用全抗菌薬はgt2ではgt1に比較して低感受性を示した。Gt2の感受性結果は藻株の由来に関わらず一定であり、ゲンタマイシン、アムホテリシン-Bは感受性を示したが、乳汁への残留性から使用は困難であった。以上から、薬剤による本藻の治療は困難であることが確認された。そこで、不活化ワクチン株を作製、成牛および子牛に接種し、作製ELISAにより抗体価を測定し、防除の検討を行った。感染牛血清は、非感染牛と比較して有意に高い抗体価を示し、良好な再現性を得たことから、作製ELISAの有用性を確認した。さらにワクチン接種牛の抗体価を測定した結果、1.0 x 108 cells/mLの二回接種において、8週後までカットオフ値を超えた抗体価を確認した。以上からワクチンによる新たな防除の可能性を提示した。 本研究成果は学術集会にて発表を行い、現在学術論文への投稿準備中である。
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