本研究の目的は、「子どもたちに科学的探究の全体像を理解させるために、「探究のナラティヴ」を導入した教授ストラテジーを提案すること」である。本研究では、シュワブの探究学習論を吟味し、その中で提案された「探究のナラティヴ」を手がかりとして、科学的探究の全体像を理解させるための教授ストラテジーを開化するとともに、開化した教授ストラテジーをもとに授業実践を行い、教授ストラテジーの評価を行う。本年度取り組んだ研究課題は、以下の通りである。 シュワブの探究学習論の基底をなす探究観、知識観の解明 : シュワブ論文、並びにシュワブの探究観、知識観の解明を試みた論文を精査し、シュワブの探究観知識観を解明した。その結果、探究の二相性、探究の多様性、探究の社会性の観点を重視していることが明らかとなった。 シュワブの理論が具現化された科学教育教材の分析 : シュワブの理論をもとにした「探究への招待」の教材が開化され、BSCS生物教師用ハンドブックの中で示されている。BSCS教師用ハンドブックは、およそ50年前に初版が公刊されて以来改訂を重ね、2009年には第4版が公刊された。シュワブの理論が具現化された当該教材の分析から、本研究がねらいとする教授ストラテジー開化の基礎的知見を得た。この成果をまとめたものは、『教材学研究』への掲載が決定している。 シュワブが提唱した「探究のナラティヴ」の分析 : シュワブの提唱する「探究のナラティヴ」の方法をその具体例に基づいて分析し、授業で実践するために必要な要素を抽出した。この成果の一部は、日本理科教育学会全国大会において発表した。 教授ストラテジーの評価法の検討 : 「探究のナラティヴ」を用いた教授ストラテジーの評価方法を検討するための足掛かりとして、米国NAEP調査の手法の特質を明らかにした。この成果は日本科学教育学会研究会において発表した。
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