研究実績の概要 |
平成26年度は都築正男氏(上智大学)との共同研究で、重さが6以上の正則Hilbertカスプ形式のスタンダード保型L関数の中心値とその2次捻りのL関数の中心値(または1階微分中心値)のレベルに関する平均の漸近公式を導出した。この公式はFourier係数の動く区間[-2, 2]上のテスト関数の値の重み付きの平均である。応用として、Hilbertカスプ形式のフーリエ係数の一様分布性が従う。つまり、任意に与えられた区間にFourier係数が入るようなHilbertカスプ形式で、そのL関数の中心値とその2次捻りのL関数中心値(または1階微分中心値)が同時に消えないようなものが豊富に存在することが分かる。しかも単に1階微分中心値が消えないだけでなくL関数の中心での位数がちょうど1になるようなHilbertカスプ形式の存在を考察した。この結果は楕円曲線やアーベル多様体のL関数の中心での位数とMordel-Weil階数が一致するというBirch-Swinnerton-Dyer予想の観点でも重要であると思われる。 第2の応用として、正則Hilbertカスプ形式のHecke体の拡大次数の拡大次数の増大度も評価した。具体的には、Fourier係数が任意に与えられた区間に入り、なおかつL関数の中心値や2次捻り微分中心値が同時に消えない重さが平行で6以上の正則Hilbertカスプ形式であって、そのHecke体の拡大次数とレベルが十分大きいものが豊富に存在するということを示した。ここで、微分値に関する結果は2次ベースチェンジL関数の1階微分値の非負性の仮定の下で与えられている。 証明には2つの明示的な相対跡公式を用いる。1つ目は昨年度におこなった都築正男氏(上智大学)との共同研究で得られた相対跡公式である。そして2つ目は今回の研究で得られた相対跡公式である。
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