研究概要 |
小胞体ストレスと潰瘍性大腸炎の関連性を調べるため、まず杯細胞成熟に必要である小胞体ストレスセンサーOASISを欠損したマウスにおける大腸炎発症の有無を調べた。生後3~12週齢マウスの大腸を解析すると、全ての週齢において成熟杯細胞が減少していたがそれ以外の病理所見は見られなかった。このマウスにデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を投与し、大腸炎を誘発すると野生型マウスと比較して体重が著しく減少し、死亡率が有意に増加した。HE染色やPAS染色による病理組織学的解析からOASIS欠損マウスは野生型マウスよりも早期の段階で炎症性細胞の浸潤とびらんや潰瘍が認められ、野生型マウスよりも大腸炎が増悪する傾向にあった。またTUNEL染色を行うとOASIS欠損マウスの陰窩頂端側において多数のTUNEL陽性細胞が検出され、粘膜上皮細胞のアポトーシスが増加していることが明らかになった。次に粘膜上皮細胞における炎症性サイトカイン(Tnfα, IL-1, IL-6)や小胞体ストレスマーカー(Bip, Chop)の発現量やcaspaseの切断量をRT-PCRやin situハイブリダイゼーション、WBを用いて調べた。その結果、小胞体ストレスマーカーの発現量及び発現範囲がDSS投与したOASIS欠損マウスにおいて有意に上昇、拡大していた。また、caspase3の切断及び、小胞体ストレス誘導性アポトーシス活性を示すcaspase12の切断も有意に増加しており、病態形成に小胞体ストレス誘導性のアポトーシスが寄与していることが示唆された。そこで小胞体ストレス緩和によって病態形成抑制ができるかを検討した。DSS投与と同時に化学シャペロンであるタウロウルソデオキシコール酸を経口投与すると、OASIS欠損マウスにおける病態の増悪やアポトーシス、各種遺伝子発現量、easpaseの切断量の増加が全て抑制されていた。これらの結果からDSS誘導性大腸炎の病態形成において小胞体ストレスが重要な役割を果たしていることと、OASISがDSS誘導性大腸炎から大腸粘膜を保護する上で重要な因子であることが明らかになった。
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