高強度の伸張性レジスタンス運動をおこなうと,動脈スティフネスが運動直後には増加せず,運動96時間後まで徐々に漸増したことが1年目の研究から明らかになった.またこの増加は,タウリンの摂取によって有意に抑制されることを見出した.しかし,なぜ動脈スティフネスがタウリンの摂取によって抑制されたのかは明らかではない.動脈スティフネスに影響を及ぼし得る血圧は運動による変化が確認されなかったため,本年度においては,動脈スティフネスとの関連が報告されている酸化ストレスに着目し,タウリンの抗酸化作用が運動後動脈スティフネスに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.健康な若年男性29名をランダムに,プラセボ摂取群(14名)とタウリン摂取群(15名)に分けた.2週間の試験薬(6g/day)摂取後,すべての被験者の非利き腕の上腕屈筋群に伸張性レジスタンス運動(50回)を負荷した.運動前と運動24,48,72,96時間後に動脈スティフネスの指標として頸動脈大腿動脈間脈波伝播速度(carotid-femoral pulse wave velocity: cfPWV)の測定をおこない,酸化ストレスの指標として血清チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)をELISA法にて評価した.本年度の研究によって,1.高強度伸張性レジスタンス運動後には,cfPWVと同様に血清TBARSも運動96時間後まで漸増すること,2.このTBARSの増加は,タウリン摂取群において有意に抑制されること,3.高強度伸張性レジスタンス運動によるcfPWVとTBARSの増加量は有意な正の相関関係を示すこと,が検証された.これらの結果から,高強度の伸張性レジスタンス運動は動脈スティフネスを運動96時間後まで漸増させること,また継続的な経口タウリン摂取は抗酸化作用を介して動脈スティフネスの増加を抑制する可能性があることが示唆された.
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