研究課題/領域番号 |
13J00712
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
平山 悟 日本大学, 大学院生物資源科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 乳酸菌 / 酵母 / 複合バイオフィルム / 共凝集 / レクチン様タンパク質 / マンナン / 伝統発酵 |
研究概要 |
これまでの研究で、福山酢由来乳酸菌Lactobacillus plantarum ML11-11が出芽酵母との細胞接着により、顕著な複合バイオフィルム形成や共凝集性を示すことが明らかになっており、この細胞接着には乳酸菌のレクチン様タンパク質及び酵母のマンナンが関与していることが示唆されている。 当該年度の研究では、乳酸菌のレクチン様タンパク質を同定し、酵母との接着機構を解明することを目的とした。まず、酵母との接着に関与することが予測されるML11-11の多糖分解酵素遺伝子をクローニングして、ML11-11の非凝集性変異株に導入したが、酵母への接着能を相補できなかった。 次に、ML11-11の野生株及び非凝集性変異株の表層タンパク質を調製し、タンパク質定量やSDS-PAGEを行った結果、非凝集性変異株は表層タンパク質量そのものが少ないことが明らかとなった。上記のクローニングによって相補できなかった原因として、非凝集性変異株ではタンパク質を細胞表層に輸送するシステムに欠陥がある可能性が示唆された。 一方、SDS-PAGEで検出されたバンドの中で、非凝集性変異株において顕著に減少していると思われるバンドについて、質量分析によりペプチド配列を解析した。その結果、代謝やストレス応答などに関与する数種の細胞内タンパク質が同定された。このことから、これら細胞内タンパク質が細胞表層に移行して、酵母との接着に関与している可能性が示唆された。 加えて、以前に行っていたML11-11のゲノムDNAシーケンスを再解析した。これまでに用いていたWCFS1と異なるゲノム公開株L. plantarum JDM1のゲノム配列をリファレンスとしてマッピングし、新たなコンティグ配列を得た。これにより、WCFS1には存在しないがJDM1には存在する遺伝子領域についても配列情報を得ることができた。なお、前述の多糖分解酵素遺伝子は、ML11-11とJDM1には共通して存在するが、WCFS1には存在しないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乳酸菌のレクチン様タンパク質の同定には至っておらず、当該年度ではトランスポゾン遺伝子を用いた遺伝学的アプローチが検討できていない。しかしながら、ML11-11のドラフトゲノムシーケンスをさらに得ることができ、これは今後のポストゲノム解析に利用することができる。また所属研究機関のプロテオーム解析により幾つかの候補タンパク質の情報も得ることができ、今後の研究の進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝学的アプローチにより、乳酸菌L. plantaram ML11-11のレクチン様タンパク質の同定を目指す。乳酸菌L. plantarum ML11-11にトランスポゾン遺伝子を導入し、4酵母との複合バイオフィルム形成や共凝集を起こさない株をスクリーニングすることで、それら相互作用に関与する遺伝子を同定したい。 また、乳酸菌と酵母の共培養系におけるマイクロアレイやメタボローム解析等のポストゲノム解析を通して、乳酸菌と酵母の物質レベルの相互作用と細胞応答を総合的に調べていく。
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