本研究では、BMP2誘導性骨芽細胞分化においてRhoファミリータンパク質の代表的な三因子(Rho、Rac、Cdc42)の連携がそのシグナルを制御している可能性を想定し、BMP2誘導性骨芽細胞分化のメカニズムを解明することを目的として研究に取り組んだ。 これまでの研究結果から、筋芽細胞株C2C12細胞においてBMP2刺激により活性化したRacがBMP2誘導性骨芽細胞分化を抑制するという結果を得た。そこで、同じRhoファミリータンパク質であるCdc42もBMP2誘導性骨芽細胞分化を調節すると仮説を立て、cdc42siRNAを用いた実験を行った。その結果、cdc42も同様に骨芽細胞分化抑制的に働くことを示した。Racの上流因子であるTiam1 siRNAを用いて行った実験の結果から、Tiam1を介した経路によってBMP2誘導性骨芽細胞分化抑制が生じることを明らかにした。 さらに、ラット骨髄由来間葉系幹細胞とマウス前骨芽細胞株(MC3T3-E1)を用いて、Rac阻害下でのBMP2誘導性骨芽細胞分化を検討したところ、両者のいずれにおいてもRacはBMP2誘導性骨芽細胞分化に影響を与えなかった。 本研究課題で注目するRhoファミリー因子は細胞遊走や細胞骨格形成に関わることから、神経軸索の伸展や癌の転移・浸潤について多くの研究がなされていたが、骨研究領域においては、Rhoファミリータンパク質、特にRacとCdc42の作用についてはほとんど明らかになっていなかった。本研究により、Rac、Cdc42が骨形成へ及ぼす作用を明らかにすることで、骨形成の新たなメカニズムの解明へとつなげることができる。
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