研究概要 |
本研究課題の目標は, 量子ドット(QD) LEDに基づく電流駆動型表面プラズモン光源の実現である. また, 同素子を表面プラズモン受光素子としても動作させることで, 光源, 導波路, 受光素子の同一回路内への集積を行い, 情報伝送デバイスとして評価する. 本年度は主に, QDプラズモン光源の基礎物理であるQDから表面プラズモンポラリトン(SPP)へのエネルギー遷移およびそれに伴うSPPの励起および伝搬の実証を行った. 当該年度の主な成果を以下に示す. 1. 電子ビームリソグラフィおよび集束イオンビーム加工等の微細加工プロセスを用い, 金属薄膜構造上にQDプラズモン光源を集積した. 2. プラズモン光源に励起光を照射し, 金属薄膜上におけるSPPの励起・伝搬の観測を試みた. その結果, QDにより励起されたSPP由来の出力光の観測に成功し, QDによるSPP励起を実験的に実証した. 3. 励起したSPPの伝搬特性を得るため, 光源を中心とした円形出力スリットを作製し, SPPの観測を行った. その結果, 出力光はすべての方向でほぼ一定の強度を示し, SPPが光源から等方的に伝搬していることを実証した. さらに, SPPの伝搬距離および伝搬分散等も実験的に測定し, 本光源-導波路構造が長距離・低分散伝搬を有していることを示した. 4. 本光源におけるQD-SPP結合効率を実験的に測定した. この結果, 本光源は結合効率34±8%を有しており, 高効率光源に向けた高いポテンシャルを示した. 今回, 我々は光励起を用いて長距離・低分散伝搬および高い集積度を有する高効率プラズモン光源の実証に成功した. 本研究成果は, 電流駆動型QDプラズモン光源の実現に向けた着実な第一歩であると確信している. また, 本研究に関連した応用物理学会における発表が「応用物理学会 講演奨励賞」(2013年9月)を受賞しており, 本研究成果が高く評価された.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では今後, 本年度得られた知見をもとに電流励起可能なプラズモン光源を作製し, 電流注入を用いたQDによるプラズモン励起を実証していく予定である. 第一段階として, LED構造の作製を試みる. その際, 発光層としてQD以外にも無機・有機材料等の使用も考慮に入れる予定である. また. ラズモン集積回路の重要な要素である光アンテナやプラズモン導波路といった光源以外のデバイスについても, 新規のナノ構造や動作メカニズムを考案・検討し, 実験的に実証していく予定である.
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