研究課題
これまでの分子系統解析の研究から、光合成性真核微生物であるクリプト藻類とハプト藻類、従属栄養性生物であるカタブレファリス類、テロネマ類、ゴニオモナス類、有中心粒太陽虫類など多様な生物群がハクロビアと呼ばれる一つの系統群にまとめられるかどうかは議論を呼んでいる。そこで本研究ではハクロビアに属するとされる系統群からそれぞれ複数種についてミトコンドリアDNA (mtDNA)の塩基配列を決定し、系統解析や比較ゲノムを行うことによりハクロビア仮説を検証することを目的としている。具体的にはカタブレファリス類、ゴニオモナス類、有中心粒太陽虫類、テロネマ類、パルピトモナス類のmtDNA配列を決定することを目指している平成25年度はカタブレファリス類Roombia sp. とパルピトモナス類Palpitomonas bilixのmtDNAを配列決定することに力を入れた。所属研究室が所有している次世代シーケンサー(NGS)によるRoombia sp. のトランスクリプトームデータ内に含まれているmtDNAの転写産物を、Blast探索を行うことで合計100kbp以上同定した。このデータからはmtDNAとしては極めて異例なことに、イントロンが大量に存在することが示唆された。これらの配列情報に基づき、PCRによるmtDNAの増幅とサンガー法による配列決定を繰り返し行うことで、実際にRoombia sp. のmtDNAが大量のイントロンを持つことが確認された。パルピトモナス類Palpitomonas bilixについては、複数のmtDNA遺伝子の保存的な領域に対して縮重プライマーを設計してPCRを行い、増幅産物を配列決定することで、幾つかの遺伝子断片を決定することに成功した。決定した配列の両端にoutwardプライマーを設計し、PCRによる断片間領域の増幅を試みた。DNA増幅が確認された場合はサンガー法によって配列を決定した。これらの実験によりP. bilixのmtDNAは現在までに約24kb決定されている。その後、両種についてmtDNAの完全長を得るためにNGSによるゲノムシーケンスを行い、シーケンスデータを取得した。
2: おおむね順調に進展している
mtDNA全配列の決定には至らないものの、二種の生物について並行して実験を進め、いずれもNGSデータの取得まで完了しているため。
取得したNGSデータを解析し、Roombia sp., Palpitomonas blix両種についてmtDNAの解読を目指す。
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