研究課題
1. 研究の目的肥満細胞特異的な抑制性受容体による負の制御機構の全貌を明らかにし、その活性化制御機構を明らかにする。2. 実施した内容(1)計画の変更 : 受容体の機能の詳細な解析にはマウスを用いた実験が必要であるため、交付申請書に記載した新規受容体候補IL1RAPLIのマウス肥満細胞での発現を定量PCR法で検証した。その結果マウス肥満細胞におけるIL1RAPL1の明らかな発現を認めなかったため、再度肥満細胞に発現する新規受容体の探索をヒト及びマウス肥満細胞の遺伝子発現データを用いて行った。(2)新規受容体の再探索 : ヒト末梢血由来肥満細胞のRNAシークエンス解析により、蛋白質をコードすると予想される遺伝子を16869遺伝子得た。予想されるアミノ酸配列から、細胞外に受容体ドメインを持ち、細胞内にシグナルモチーフを持つ膜型受容体と思われる蛋白質をコードする遺伝子を187遺伝子選択した。そのうちマウス肥満細胞にも遺伝子発現が認められるものとして、マイクロアレイデータベース(BioGps)でのシグナル強度が100以上のものを36遺伝子選択した。その中で現在までに肥満細胞に関する報告が無いものが15遺伝子あり、そのうち6遺伝子についてトランスフェクタントを作製した。これらをパーバナデート処理して候補分子のチロシンリン酸化能を検証したところ、2分子でチロシンのリン酸化を認め、シグナル伝達能を有すると考えられた。これらのうち1つである分子Xでフローサイトメトリー法によりマウス骨髄由来肥満細胞膜上の発現を認めた。分子Xはマウス生体内においては肥満細胞前駆細胞に発現していた。3. 意義・重要性肥満細胞前駆細胞は組織に存在する成熟肥満細胞の前段階の細胞であり、アレルギー反応時にはその数が増えることにより、炎症局所での肥満細胞数増加に寄与していることが報告されている(PNAS, 102 : 18105, 2005)。よって分子Xによる肥満細胞前駆細胞活性化制御機構を解明することは、組織中の成熟肥満細胞数を制御し、局所の炎症を制御することにつながる。
2: おおむね順調に進展している
・分子Xの生体内の細胞における発現解析を行ない、肥満細胞前駆細胞に発現していることを明らかにした。・分子X遺伝子欠損型マウスは胎生致死性であるため、現在肥満細胞特異的遺伝子欠損型マウスを作製中である。
1. 推進方策In vivoでの分子Xの機能解析を行うため、肥満細胞特異的遺伝子欠損型マウスを作製した後、アレルギー疾患モデルの表現形を野生型と比較する。肥満細胞特異的遺伝子欠損型マウス作製の間に、In vivoでの解析として、分子Xの発現を認めた肥満細胞前駆細胞を生体内から単離し、抗体及びリガンド刺激により細胞の生存率、遊走能、接着能が変化するか検証する。2. 研究計画の変更(1)交付申請書に記載した新規受容体候補分子であるIL1RAPL1はマウス肥満細胞での発現を認めなかったため、再度新規受容体の探索を行い、新たな候補受容体である分子Xを選択した。(2)分子Xは細胞内に活性化シグナルを伝達するチロシンキナーゼドメイン(PTKc)を有しており、活性化シグナルを伝達する活性化受容体であると考えられる。よって、研究目的の1つである「抑制性受容体による負の制御機構を明らかにする」ことからは外れるが、肥満細胞の活性化制御機構を解明するという目的のもと、分子Xに着目し研究を進める。
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炎症と免疫
巻: 22 ページ: 47-53
Plos One
巻: 8 ページ: 1-8
10.1371/jqurnal.pone.0076160