研究実績の概要 |
近年、アレルギー疾患は増加の一途をたどっており、現在何らかのアレルギー症状のある人は、我が国で3人に1人はいることが分かっている(厚生労働省 平成15年度保健福祉動向調査)。また、組織に存在する肥満細胞の過剰な活性化によってアレルギー症状が発現することが知られている。従って、肥満細胞の活性化制御機構を解明することが、アレルギー疾患の病態解明に必要である。 本研究の目的は、肥満細胞の活性を制御する新規受容体分子を同定し、その制御機構を解明することである。まず、ヒト末梢血由来肥満細胞の遺伝子発現データを用いた網羅的解析を行い、分子 Xを選択した。 生体内での詳細な解析を行う上でマウスを用いることは重要であると考えられたため、マウス肥満細胞における分子 Xの発現をフローサイトメトリー法により解析したところ、分子 Xはマウス骨髄由来肥満細胞の膜上に発現し、マウス生体内では骨髄中に存在する肥満細胞前駆細胞の膜上に発現していた。 肥満細胞における分子 Xの機能を明らかにすることを目的とし、分子 Xを強制発現させた肥満細胞株を用いた解析を行ったところ、分子 Xは細胞の接着能に関与していることが示唆された。 アレルギー性疾患の慢性期では、肥満細胞前駆細胞の末梢組織への遊走によって肥満細胞が過剰に増加し、病態を増悪させていることが知られている (Joakim S. Dahlin. et al., Mol Immunol, 63:9, 2015)。しかし、肥満細胞前駆細胞の末梢組織への遊走、浸潤機構、及び分化、成熟機構には未だ不明な点が多い。本研究は肥満細胞前駆細胞の末梢組織への接着、浸潤機構の一端を明らかにすることにより、アレルギー疾患における過剰な肥満細胞の増殖を抑え、症状を緩和する治療法の開発に繋がると期待される。
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