研究課題/領域番号 |
13J00822
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡辺 梢 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ラマン分光法 / 超解像顕微鏡 |
研究概要 |
ラマン顕微鏡は、光学顕微鏡技術を分光法と組み合わせることで、イメージングとラマン分光分析を同時におこなう技術である。ラマン顕微鏡では特定の分子を認識しながらその分布像を得ることができ、観察対象の分子を無染色で観察できる上に、一度に多数の分子の情報が得られ、その分子の環境変化を分析することもできる。ラマン顕微鏡では複雑な生体分子のダイナミクスを解析する事も可能であることから、高空間分解能かつ高時間分解能を両立する新しいラマン顕微鏡は、様々な研究分野に対して大きなインパクトを与えられると考えられる。 本研究では、蛍光顕微鏡の空間分解能を向上させるための超解像技術である構造化照明(Structured Illumination : SI)を利用し、高空間分解能/高時間分解能の新しいラマン顕微鏡の構築を目指す。そのために、SIとスリット走査技術を組み合わせたラマン顕微鏡の開発をおこなった。SIで照明して取得した空間分布には、より高空間周波数の成分が含まれていることから、数学的に高空間周波数成分を抽出することで超解像のラマン画像が構築できる。これまでの研究成果として、構築したラマン顕微鏡を用い、ラマン顕微鏡の標準的なサンプルである、ポリスチレン微粒子(直径500nmDのラマンイメージングをおこなった。これまでのスリット走査型ラマン画像に対し、開発した超解像ラマン顕微鏡画像では照明ラインに平行な方向の空間分解能向上が顕著に顕れた。このことより、超解像ラマン顕微鏡の開発に既に成功したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した通り、初年度では超解像ラマン顕微鏡システムの構築、及び画像処理プログラムの開発に取り組み、既に標準的なサンプルを用いて顕微鏡の性能を評価することができた。そのことに加え、既に応用研究として、複雑な生体試料の撮像にも着手しており、計画書では次年度に予定していた三次元の撮像システムも既に完成している状態である。このことから、当初の計画以上の進展があると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果として、超解像のラマン顕微鏡を開発し、ラマン顕微鏡のサンプルとして標準的なポリスチレン微粒子のラマンイメージングに成功した。研究結果より、既に新しい顕微鏡法の開発に成功したと言える。これからの展望としては、開発した超解像ラマン顕微鏡を生体試料に適用し、無染色/非侵襲で複雑な生体サンプルの観察を実現化する。既に応用的なサンプルの測定にも着手しているが、サンプルの測定条件の最適化や、取得したスペクトルデータの複雑な処理を必要としている。今後はこの様に、開発した新しい顕微鏡法の応用研究について取り組む。
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