研究課題/領域番号 |
13J00831
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
櫻井 庸明 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | フタロシアニンポリシロキサン / ペリレンジイミド / 有機半導体 / 電荷輸送 / 分離積層構造 / 光伝導性 |
研究概要 |
研究代表者は、自己組織的にカラム構造を形成する通常のディスク状π共役系分子ではなく、共有結合によって一次元カラムを構築する"シシカバブ型"ポリマーに着目し、研究を進めてきた。具体的には、フタロシアニンシリコン錯体の中心金属であるシリコンが酸素原子で架橋されシロキサン構造を主鎖構造とするポリマーを用いた。このポリマー中では結合角が180℃に固定されたシロキサン結合により隣接間フタロシアニン距離が約3.3Åに保たれるという事実を鑑み、電子アクセプター分子を混合した際に電子ドナーとアクセプターの一次元カラム構造が維持される系が構築できると考えた。実際に、X線回折測定および吸収スペクトル測定を行った結果、このポリマー(Poly-SiPc)とペリレンジイミド(PDI)との混合材料はポリマーとPDIがドメインを形成しミクロ相分離する結果が示唆されたのに対し、対応するメタルフリーフタロシアニン(H_2Pc)とPDIの混合系では両者が混じり合ってスタックすることが示唆された。また、FP-TRMc測定の結果、Poly-siPc/PDI混合系ではPDIの混合比が上昇するにつれて伝導シグナルの上昇が見られたのに対し、H_2Pc/PDI混合系では顕著な上昇は見られなかった。この事実は上記の集積構造の差異を反映しており、それぞれのカラムが存在していることで効率的な光誘起電荷分離と続くフタロシアニンカラムに沿ったホール輸送が行われるためと考えられる。さらに研究代表者は、PDI分子を共有結合によってポリマーの側鎖に連結した巨大ブラシ状ポリマーの開拓を行った。この系では、主鎖によりホール輸送経路が、側鎖同士の会合により電子輸送経路が形成されることが吸収スペクトル測定およびX線回折測定から支持されている。ブラシ状ポリマーにおいてもFP-TRMC測定を行い移動度を見積もったところ、ホール/電子移動度の総和(Σμ)は0.6cm^2V^<-1>S^<-1>に達することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であるSi以外のGe, Sn錯体についてはまだ着手していないため、この点は遅れがあると言える。一方で、当初予期していなかったこのポリマー特有の挙動を発見し、展開できたという意味では期待以上の進展があったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初とは異なる研究展開をしてきたが、それについて学術論文を執筆中であるため、2年目は当初の予定であった、金属種の効果について調べていく予定である。
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