研究代表者は、自己組織的にカラム構造を形成する通常のディスク状π共役系分子ではなく、共有結合によって一次元カラムを構築する”シシカバブ型”ポリマーに着目し、研究を進めてきた。具体的には、フタロシアニンシリコン錯体の中心金属であるシリコンが酸素原子で架橋されシロキサン構造を主鎖構造とするポリマーを用いた。このポリマー中では結合角が180 °に固定されたシロキサン結合により隣接間フタロシアニン距離が約0.33 nmに保たれるという事実を鑑み、電子アクセプター分子を混合した際に電子ドナーとアクセプターの一次元カラム構造が維持される系が構築できると考えた。実際に、X線回折測定および吸収スペクトル測定により、このポリマーとペリレンジイミド(PDI)との混合材料はポリマーとPDIがドメインを形成しミクロ相分離する結果が示唆されたのに対し、対応するメタルフリーフタロシアニン(H2Pc)とPDIの混合系では両者が混じり合ってスタックすることを示してきた。 本年度は、ディスクの集積構造を明確に制御するための分子設計指針として、中心金属をシリコンではなくゲルマニウムとした誘導体を合成し、ディスク間距離を大きくしたポリマーを得ることに成功した。シリコンフタロシアニンのポリマーと比較すると、ゲルマニウムフタロシアニンからなるポリマーのほうがPDIと混合した際に効率良く電荷分離を起こし、高い電気伝導度を示すことを発見した。また、PDI分子を共有結合によってシリコンフタロシアニンポリマーの側鎖に連結した巨大ブラシ状ポリマーの開拓を行い、SiPc–PDI間のアルキルリンカーをC12およびC6とした各誘導体の合成を行い、リンカーが短くなるほど光誘起電荷分離後のキャリア再結合が促進するため、電荷キャリア寿命が短くなるという事実を見出した。
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