研究課題/領域番号 |
13J00833
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土井 良平 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 有機金属化学 / 触媒化学 / フッ素化学 / パラジウム触媒 |
研究概要 |
遷移金属錯体を用いた炭素-フッ素結合の活性化反応は、その高い結合エネルギーゆえに非常に困難な課題である。これを達成するために従来では高活性なニッケル錯体を用いた反応が研究されてきた。しかし、ニッケルを用いた反応では、用いる錯体の反応性が高すぎるために、複数のフッ素を有するアレーン化合物を用いた反応では、選択性が低く、複数のフッ素の切断が起こってしまうことが問題とされていた。複数のフッ素を有するアレーン化合物、特にパーフルオロアレーン類は比較的安価であり、選択的な炭素-フッ素結合活性化が達成できれば、有用な含フッ素ビルディングブロックとなるポテンシャルを秘めた化合物である。そこで、本研究ではこれらパーフルオロアレーンをターゲット化合物として、これの炭素-フッ素結合の切断を経る官能基化反応について研究を行ってきた。その結果、ヨウ化リチウムを添加することで、クロスカップリング反応などにおける触媒としてニッケルよりも頻繁に用いられ、汎用性の高いパラジウムを用いた炭素-フッ素結合の切断が進行することを見出した。また、この知見を活かしたパーフルオロアレーン類とジアリール亜鉛のクロスカップリング反応を開発した。その際、本クロスカップリング反応の中間体として想定されるパーフルオロアリールパラジウム錯体が有機亜鉛試薬に対して不活性であり、反応機構がはっきりしていない部分があった。そこで真の反応中間体に関する知見を得るために錯体化学的なアプローチにより探索を行った結果、パラジウムの失活を防ぐために加えていたホスフィン配位子の量が決定的に重要であることを突き止めた。また、以上の研究成果を論文としてまとめ、これはChem. Eur. J. に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた通り、反応機構に関する知見を得て、それを含めた論文の執筆を完了できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、パーフルオロアリール化反応を応用した機能性有機化合物の合成を目指す。また、本反応で得られた知見をもとに、他のポリフルオロ化合物の炭素-フッ素結合の活性化反応を検討し、更なる有機フッ素化合物の合成法の確立を目指す。
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