研究課題/領域番号 |
13J00833
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土井 良平 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機金属化学 / 触媒化学 / フッ素化学 / パラジウム触媒 |
研究実績の概要 |
これまで本研究課題に沿って、パラジウム触媒存在下、パーフルオロアレーン類とジアリール亜鉛化合物のクロスカップリング反応がヨウ化リチウムを添加することで効率的に進行することを見出している。また、パラジウム錯体を用いた種々量論反応を行い、その結果をもとにリン配位子の解離を伴う三配位パラジウム錯体中間体を経るメカニズムを提唱している。そこで、本反応に関する更なる知見を得るために、反応速度論に基づいた反応解析を行った。その結果、得られたデータの正確性が十分ではないものの、リン配位子がパーフルオロアレーンと交換するようなステップを経由し、C-F結合の切断が律速段階であると考えることで合理的に説明できるメカニズムで進行していることが分かった。今後、データの精度を向上させるよう実験を重ねる予定である。 また、パラジウムよりも安価なニッケルを触媒として用いた分子変換反応を種々検討しているうちに、トリフルオロアセトフェノンのC-F結合の切断を、ゼロ価ニッケルを用いて切断する手法を見出した。本反応では、トリスペンタフルオロフェニルボランの添加が必須で、ホウ素とフッ素の強い相互作用が反応進行の鍵となっていると考えられる。この反応で得られるニッケルエノラート錯体の構造を同定し、また交差エステル化反応に対する高い触媒活性を有することを見出した。以上の結果を論文としてまとめ、J. Am. Chem. Soc.に掲載された。この研究成果は本研究に大きなアクセントを与えるものであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応機構に関する知見を得られたとともに、トリフルオロアセトフェノンのC-F結合活性化という予期せぬ結果が得られ、ここから本研究が大きな進展を見せたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、C-F結合活性化を鍵とした機能性有機化合物の合成を目指す。また、本反応で得られた知見をもとに、他の含フッ素化合物のC-F結合の活性化反応を検討し、更なる有機フッ素化合物の合成法の確立を目指す。
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