研究課題/領域番号 |
13J00842
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
篠永 東吾 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | フェムト秒レーザー / チタン合金 / 酸化チタン膜 / エアロゾルビーム / 周期的微細構造 / 生体適合性 / 細胞試験 |
研究概要 |
チタン合金へ、フェムト秒レーザーを照射することで微細構造の形成を行った。はじめに、チタン合金へ微細構造形成を行うため、ミラーやレンズ等を用いて基板表面へ集光照射できるように光学系を構築し、エネルギー減衰器を調整することでレーザーの照射スポット内におけるエネルギー密度を制御できるようにした。実験では、はじめにスポット固定照射を行い、レーザーのエネルギー密度を適切に制御することで、チタン合金表面へ偏光に対して垂直な方向に溝を有するナノ周期構造が形成された。エネルギー密度を増加すると、偏光に対して平行な方向に溝を有するマイクロ周期構造及び突起構造へと変化することが明らかになった。また、XYステージを操作することで微細構造形成領域の形成を試みたところ、ナノ、マイクロ及び突起構造が任意の領域に対して形成可能であることが明らかになった。次に、酸化チタン(TiO_2)膜ヘフェムト秒レーザーを照射することで微細構造の形成を行った。TiO_2膜はエアロゾルビームを用いることで純チタン基板上へ形成した。TiO_2膜に対して上記チタン合金の時と同様にスポット固定照射及びスポット掃引照射を行った。その結果、膜表面に対して周期的微細構造が形成され、その周期は用いたレーザーの波長775㎚より短い200~300㎚の範囲内となった。形成した周期的微細構造が骨芽細胞に与える影響を蛍光顕微鏡により観察した。周期的微細構造を形成した領域と形成していない領域における伸展した細胞数の割合に対する割合を評価したところ、周期的微細構造を形成しても伸展した細胞数は減少しないことが示唆された。また、レーザーを照射していないTiO_2膜上では細胞の伸展方向がランダムであるが、周期的微細構造を形成したTiO_2膜上では、細胞が周期的微細構造の溝の方向に沿って伸展している箇所が存在した。TiO_2膜上における細胞伸展制御はこれまでに報告がないため、はじめてTiO_2膜上における細胞伸展制御が可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画に記載した通り、フェムト秒レーザーを用いたチタン合金に対する構造形成が可能であることが明らかになり、ステージを操作することで任意の領域への構造形成が可能であることも明らかにした。また、酸化チダン膜へのフェムト秒レーザーを用いた周期的微細構造が形成可能であることがわかった。細胞試験を行ったところ、酸化チタン膜に対してはじめて細胞伸展制御の可能性を示唆することができた。以上の結果は英語の論文(査読あり)でまとめており、国内外における国際会議で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
チタン合金に対しては1年目で得られた結果を元に、細胞試験を行い細胞が適合する微細構造の条件について調べる。酸化チタン膜に対しては、表面への微細構造形成だけではなくレーザー照射により特性を変化させることができる可能性がある。酸化チタン膜の特性変化については、例えば電気抵抗の測定により評価する。また、酸化チタン膜は真空雰囲気下で電気炉加熱を行うと酸素欠陥が生じることが知られている。酸素欠陥の形成が生体適合性に有効な可能性があるといった報告もあるので、レーザー照射により微細構造を形成した酸化チタンを真空雰囲気下で電気炉等を用いた全体加熱を行う。これらの手法で材料特性を変化させた酸化チタン膜に対して細胞の培養試験を行うことで、更なる生体適合性の向上を目指す。
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