研究課題/領域番号 |
13J00856
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
坂本 勇樹 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ウラシル / パラジウム錯体 / 水素結合 / 自己会合 |
研究概要 |
低環境負荷な触媒や材料の開発が切望されており、高次組織化された生体分子への機能性錯体の導入は環境調和型触媒や新規バイオマテリアルの開発につながるものとして期待される。また、生体分子の会合特性を利用することにより、簡便に高次構造の構築が可能になる。本研究では、核酸塩基としてウラシルを用いて、有機金属錯体であるパラジウム錯体の配列制御を行うことを目的に以下の研究を行った。 ウラシル部位を有するパラジウム錯体の配列制御 三座のピンサー型配位子をウラシル誘導体に導入し、パラジウムと錯形成させることでウラシル部位を有するパラジウム錯体を合成した。そして、残り一つのパラジウムの補助配位子を変化させることにより、錯体の自己会合特性について検討を行った。補助配位子として、臭素アニオン、アセトニトリル、水、トリフルオロ酢酸アニオンを有するパラジウム錯体の場合では、X結晶構造において、ウラシル部位が分子間で水素結合を示し、二量体の形成が確認された。また、ウラシル部位やベンゼン環部位がπ-π相互作用を示し、二量体がずれて上下に重なった構造の形成が見られた。しかしながら、補助配位子としてトリフルオロメタンスルホン酸アニオンを有するパラジウム錯体においては、ウラシル部位と配位子のトリフラートアニオンが水素結合を形成し、ウラシル部位間での水素結合による二量体の形成は見られなかった。以上の結果から、補助配位子の効果により、ウラシル部位の水素結合の様式が変わり、異なる自己会合様式を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
扱っている生体分子は非常に極性が高く、溶解性が低いといった特徴を持っているため、一般的な反応も簡単には進行しづらいと考えられる。そのため、当初の計画に比べて、目的物の合成に時間がかかっており、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はグアニン誘導体への配位子部位の導入を行い、グアニン八量体を不斉配位子とした不斉触媒開発への展開を行う。グアニン誘導体は金属カチオンの添加により、不斉構造を有するグアニン八量体を形成することが知られている。そのため、ボスフィンやピリジンなどの配位部位を有するグアニン誘導体の合成を行い、グアニン八量体自体を不斉配位子とした触媒の合成を行う。また、導入する金属カチオンの効果についても検討を行う。金属カチオンのイオン半径や価数を変えることにより、グアニン八量体において、四量体間の距離が変化し、金属中心の配位環境の制御が期待される。以上の検討を行い、グアニン八量体を不斉配位子とした不斉触媒の触媒能を明らかにする。
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