研究課題/領域番号 |
13J00881
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
桝田 浩孝 北海道大学, 大学院情報科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 挿入・欠失 / 変異率 / DNA二重鎖切断 / DNA二重鎖切断修復 |
研究概要 |
ゲノム上に生じるDNA二重鎖切断と、その修復によって生じた挿入・欠失の発生率とそのゲノム配列依存性の特性を明らかにすることを目標として研究を行っている。この目的のために、フリーラジカルを発生する薬剤を用いてゲノム全体にDNA二重鎖切断を導入し、ゲノム全体の配列決定を行い変異の検出、解析を行う。そのため、1. 細胞あたりのDNA二重鎖切断の数と分布を明らかにする、2. DNA二重鎖切断を導入した細胞に生じた変異を検出する、の2点について平行して研究を進めた。 DNA二重鎖切断の数、分布については二本鎖DNAのアダプターを切断末端に結合する手法を改良して用いた。DNA二重鎖切断の数を明らかにするために、ゲノムの切断末端にライゲーションされたアダプターのみを定量的PCRで検出する手法を独自に開発した。この手法を用いてアダプターのコピー数を計測し、DNA二重鎖切断の数を定量した。次にDNA二重鎖切断のゲノム全体での分布を明らかにするために、アダプターが結合したDNA末端付近の配列を次世代シーケンサで網羅的に配列解析した。この結果これまでに細胞中で報告されていなかった、フリーラジカルによる染色体ゲノム上に生じるDNA二重鎖切断の不均一性を示唆する結果が得られた。 DNA二重鎖切断修復による変異を同定するために、増殖の際や、処理前に集団中に含まれる変異を除く実験系を構築した。薬剤処理をしていない細胞を用いて、薬剤処理を行わない場合変異が検出されないことを確認した。さらに、細胞あたり数百のDNA二重鎖切断を導入する条件で細胞を処理し、生存した細胞12クローンの全ゲノム配列決定を行った。この実験からは同定された変異が非常に少なく、変異率を計算するまでには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題の遂行に、複数の新規実験系の樹立が必要であり、各手法の設計、結果の検証に相応の時間がかかっている。DNA二重差切断を定性的、定量的に解析する実験系では再現性など検証できていない点も残るがデータが得られ始めている。変異の検出については検出手法の検証にとどまっており、DNA二重鎖切断のの導入条件について更に検討が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
DNA二重鎖切断の特性解析では、データの検証をすすめ、新規実験系の提案として成果を論文として発表することを目指している。また、DNA二重鎖切断を定量的に解析できるようになったことを利用し、DNA二重鎖切断の導入手順を薬剤濃度と処理時間を中心に改良し、DNA二重鎖切断修復による変異の効率的な検出、定量を試みる。
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