ゲノム上に生じるDNA二重鎖切断と、その修復によって生じた挿入・欠失の発生率とそのゲノム配列依存性の特性を明らかにすることを目標として研究を行った。 当初はゲノム中1カ所の特異的な配列をhoming endonucleaseで切断することを計画していたが、この方法ではある特定の配列上での変異の発生特性しか明らかにすることができない。そのためフリーラジカルを発生する薬剤、Bleomycin Sulfate を用いてゲノム全体にDNA二重鎖切断を導入し、ゲノム全体の配列決定を行い変異の検出、解析を行うことにした。これに伴い、導入された変異だけではなく、変異率と配列依存性を明らかにするためにDNA二重鎖切断自体の数と分布を明らかにする必要があり、その点について平行して実験系を作成し解析を行った。 DNA二重鎖切断の数、分布については二本鎖DNAのアダプターを切断末端に結合する手法を改良して用いた。DNA二重鎖切断の数を明らかにするために、ゲノムの切断末端にライゲーションされたアダプターのみを定量的PCRで検出する手法の開発を目指した。しかしこの開発した方法では結果に再現性が得られず、DNA二重鎖切断の数を検出する方法として利用することができなかった。次にDNA二重鎖切断のゲノム全体での分布を明らかにするために、アダプターが結合したDNA末端付近の配列を次世代シーケンサで配列解析した。その結果、遺伝子領域と遺伝子間領域にDNA二重鎖切断の発生頻度に優位な違いを発見した。 DNA二重鎖切断修復による変異を同定するために、集団中にごくわずかな変異を効率的に次世代シーケンサによって検出する実験系を新たに構築した。そこからBleomycin Sulfate 処理による変異が酵母ゲノム上に約200個発見された。
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