研究課題/領域番号 |
13J00883
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
呉 仁済 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 高暮ダム / 朝鮮人強制動員 / 飯場頭 / 炭焼労働者 / 朝鮮人連盟 / 中国新聞 / 発電工事 / 広島 |
研究概要 |
本年度は広島県庄原市にある高暮ダムの歴史についての調査に多くの時間を費やした。調査に当たっては、高暮ダムに関わった朝鮮人を①強制連行された朝鮮人、②朝鮮人飯場頭とその子どもたち、③朝鮮人炭焼き労働者、そして④解放後の朝鮮人連盟の活動家たちに分類し、それぞれの歴史を把握すると共にそれぞれの関連性についても分析を行うよう努めた。 資料収集の面では、広島県立図書館、広島市立中央図書館にといて中国新聞を閲覧し、関連資料を収集するとともに、実際に現地の高暮ダムに行って関係者たちの協力を得ながらフィールドワークを行い、当事者にインタビューを行った。また、当時のダム建設業者であった奥村組の奥村記念館にて資料調査を行った。その他関連資料を様々な側面から資料を収集しようと努めた。 調査の具体的な成果としては第一に、資料として当時地元にあった2つの小学校の廃校記念誌を入手し、当時その小学校に通っていた朝鮮人児童の名簿などを発見することができた。この資料から、上記②の朝鮮人飯場頭の子ども達の具体的な名前と数について従来の研究より踏み込んで把握することができた。これに関連して当時地元の小学校で教師をしていた西川ナミ子さんへのインタビューを行い、当時の状況についてより詳しくうかがい知ることができたと思う。第二に、中国新聞の調査では、高暮ダムの建設工事に関連する記事が6件あることが分かった。記事数は少ないが工事中の事故に関する記事が4件あり、当時の状況をうかがい知ることのできる貴重な記録といえる。第三に、当時の建設工事を担当した業者側の記録(『奥村組略史』、『奥村組100年史』)から、工事に至るまでの経過と工事の規模や配置について新たに知ることができた。大きな成果ではないが、背景を知るための重要な記録である。 これらの成果を次年度中に論文としてまとめたいと思う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
朝鮮人強制動員に関わったと思われる協和会関係の史料が見つからなかったという点と、解放後の朝鮮人活動家の動きについての証言や史料が十分に得られていないという点から調査を継続し続けていたが、年度の区切りを迎えてしまった。限界は限界として受け止め、成果を論文としてまとめたい。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向性としては、初年度の成果を論文としてまとめる以外に次のような方向性で研究を進めたい。第一に、近代広島における在日朝鮮人の歩みを整理すること。現在、国勢調査報告、広島県統計書(および戦後の広島県統計年鑑)、広島市統計年表を収集したが、外交史料館などのデータベースにも当ってみたい。第二に、解放後の歴史についてであるが、現在民族教育の歴史と在日朝鮮人に対する弾圧事件の2つについて若干の調査を行っている。前者は、朝鮮人学校閉鎖令後の動きについて朝鮮人児童の日本学校への編入についてのGHQ/SCAP史料が見つかっているが、この時期までを目標に解放後広島の民族教育の歩みについて整理したい。後者は、1947年に起こった密造酒取締りなどの在日朝鮮人弾圧事件(広島事件)が起こっているが、現在他県における弾圧事例との比較をおこなっている。これらについて引続き調査を行っていく予定である。
|