特別研究員の採用期間中に「解放前後の広島における在日朝鮮人史」というテーマで研究を行った。その中で特に(1)高暮ダムの解放前後史と(2)在広島朝鮮人の解放後1年史というテーマについて中心的に研究を行った。 高暮ダムとは、広島県庄原市にあるダムで1940年に着工し1949年に完工した。このダムの建設工事に多くの朝鮮人が強制動員されていた。従来の研究では朝鮮人強制労働者にのみ多くの関心が注がれていたが、本研究では①強制連行された朝鮮人、②朝鮮人飯場頭とその子どもたち、③朝鮮人炭焼き労働者、そして④解放後の朝鮮人連盟の活動家に焦点を当て、それぞれの歴史を把握するとともに、彼らの関連性についても分析を行った。従来あまり強調されてこなかった高暮ダムを取り巻く歴史を描くことができ、特に朝鮮人飯場頭とその子どもたちについてはこれまで言及されてこなかった具体的な事実も掘り起こすことができた。 次に在広島朝鮮人の解放後1年史であるが、正確には45年8月15日の朝鮮解放から1946年末までの期間を調査した。特に①民族運動と②祖国帰還の問題について集中的に調査を行った。従来の研究では広島の朝鮮人の組織化の過程が断片的に紹介されたり、帰還の動きが数値的に把握されるのみであったが、本研究の結果、次のようなことが分かった。まず、広島では朝連本部が45年11月に設置され、46年以降その傘下組織である支部や分会が各地に設置されていった。そこでは、のちの「朝連自治隊」の前身である「保安隊」の存在も確認された。また、朝連の主な活動としては46年の時点では帰国問題が中心であった。そして帰還問題については、45年8月から11月までの第1期(自費による帰還)と45年12月から46年12月までの第2期(計画輸送)に分けて祖国帰還の動きを把握することができた。 これらの問題については、今後もさらに研究を深めて行きたい。
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