研究課題/領域番号 |
13J00896
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
増田 和哉 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 免疫学 / 転写後調節 / RNA結合タンパク質 |
研究概要 |
AT-rich interactive domain 5a (Arid5a)が、マクロファージにおいてリポ多糖により誘導され、IL-6 mRNAの3'末端非翻訳領域(3'UTR)に結合することで、IL-6 mRNAの安定化に寄与することを示した。一方で、リポ多糖により、マクロファージにおいて誘導される分子Zc3h12a (Regnase-1)は、RNaseとしてIL-6 mRNAを分解し、過剰な炎症を抑制している。本研究では、Arid5aがIL-6 3'UTRのステムループ構造を有する箇所の近辺に応答することをその領域をコードしたルシフェラーゼベクターの活性化により見出した。Regnase-1はIL-6 3'UTRのステムループ構造を認識して分解することが知られている。HEK細胞において、IL-6 3'UTRのステムループ領域をコードするルシフェラーゼベクターの活性はRegnase-1発現下で抑制されるが、Arid5aおよびRegnase-1を共発現させるとその活性が回復した。このことから、Arid5aは、Regnase-1のIL-6 mNA分解能をステムループ領域近辺に作用することで抑制したものと考えられる。生体内においては、Arid5aを欠損させるとリポ多糖により誘導される血清中IL-6量が顕著に減少し、また実験的自己免疫性脳脊髄炎がArid5a欠損マウスで抑制された。このようにArid5aは、IL-6 3'UTRのステムループ構造近辺においてRegnase-1と競合することでIL-6 mRNAを安定化し、炎症に寄与していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的通り、予測される結果を得ることができた。Arid5aの免疫学分野における重要性をサイトカインIL-6 mRNAの安定化によるIL-6依存的な疾患とのつながりにより示した。Arid5aのRegnase-1とのIL-6 mRNA上における拮抗関係についてさらなる発展性を示す結果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
Arid5aによるIL-6 mRNAの安定化機構の背景には、IL-6 mRNAを分解するRegnase-1との拮抗関係が重要であることが示された。一方、IL-6 mRNA安定化の人為的な制御のためには、より詳細なArid5aのIL-6 mRNAに対する結合箇所の同定が必要である。このためには、Arid5aおよびIL-6 mRNAの複合体における結晶構造解析が有効である。解析結果よりRegnase-1のIL-6 mRNA分解をいかにしてArid5aが阻害するか分子レベルで検討する。また、マクロファージにおけるArid5aの役割だけでなく、細菌感染や自己免疫疾患において重要なT細胞におけるArid5aの役割を詳細に解明する。
|