本研究においては、AT-rich interactive domain-containing 5a (Arid5a)分子のIL-6 mRNA安定化機構を詳細に解明し、IL-6に関与する病態との関連について調査した。マクロファージは、細菌感染等の初期応答に重要であるが、リポ多糖の刺激によりArid5aが発現誘導されることを発見した。Arid5aは、IL-6 mRNAの3'非翻訳領域に存在するステムループ様構造に直接結合して、RNAを分解するタンパク質(Regnase-1タンパク質等)からの攻撃をブロックすることが明らかとなった。生体内においても、LPS誘導後のArid5a欠損マウスでは、血清中のIL-6が顕著に抑制され、生存率にも影響を与えた。また、Arid5aは、マクロファージのみならず、T細胞においても重要な働きをすることが判明した。未分化なT細胞にIL-6依存的な刺激を与えると、Arid5a分子の発現が上昇した。Arid5aは、IL-6刺激依存的なStat3 mRNAの安定化に寄与した。この場合においてもIL-6 mRNAの安定化と同様に、Stat3 mRNAの3'非翻訳領域であるステムループ様構造に結合し、mRNAの不安定化を抑制した。結果として、Arid5a欠損T細胞では、IL-6依存的に誘導されるTh17細胞の誘導が阻害され、EAE等の自己免疫疾患の抑制につながった。このように、Arid5aは、IL-6のみならずStat3 mRNAの安定化に寄与し、炎症や自己免疫疾患に深く関わることが明らかとなった。
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