研究課題
昨年度SPring-8においてテスト実験を行った分割・遅延光学系(SDO)を,X線自由電子レーザー施設SACLAへと適用し,分割したパルスX線強度の独立測定の実現可能性,並びに生成した遅延時間の精度を評価した.分割パス内で測定したパルス強度とSDO下流の共有パス上で測定した強度との相関を,片方の分割パルスのみを供給し評価した結果,標準偏差約6%の相関が得られた.従って,両分割パルス供給時においても不確かさ10%の精度によるパルス強度独立測定が可能である事を示した.また,SDO下流にX線ストリークカメラを配置し,パルス間の遅延時間を測定した.初期遅延時間には目標値から約5 psの誤差が確認されたものの,遅延時間を変化させた際の近似直線からの誤差は+/- 100 fs以下であり,ストリークカメラを用いる事で100 fsの時間精度が達成される事を実証した.SACLAに常設されている1 μm集光ミラーを用いて,分割ビームの集光特性を評価した.ビームスプリッタである薄い結晶透過側の分割ビームに関しては理想集光が達成されたものの,反射側の分割ビームにおいて集光径の増大が確認された.これは薄い結晶に残留した格子面の傾斜誤差によって波面が乱れた為であり,薄い結晶作製プロセスの更なる高精度化が必要である事が示唆された.新たなビーム分割手法として,厚い結晶のエッジ部において反射光と非接触透過光とに空間的に分割する波面分割を検討した.本手法では厚い結晶を用いるため,薄い分割結晶利用時に問題となった格子面の歪みの影響が抑制される.非集光ビームプロファイルには,エッジ部からの散乱により縞状のスペックルが確認されたものの,1 μm集光光学系利用時,両分割ビームとも集光径約1.5 μmと,ほぼ理想的な集光を実現した.また,空間的にビームを分割する事から,分割ビームの強度比も波長に依らず1:1へと制御可能であり,世界で初めて実用に足る分割・遅延光学系の開発に成功した.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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