研究概要 |
研究課題① : d軌道に複数の電子を有する低原子価タングステン錯体は炭素-酸素二重結合や窒素-窒素多重結合を活性化できる、非常に電子供与性の高い化学種であることが知られている。申請者は有機ケイ素化合物還元剤によって高原子価タングステン種を還元し、その結果生じる低原子価タングステン種に酸化還元活性活性配位子を反応させることによって、研究対称としている酸化還元活性配位子(N, N-bis (aryl)-1,4-diaza-1,3-butadiene, 4,4'-dimethylbenzil)を有するタングステン錯体の合成に成功した。この合成手法を用いることにより、電子的環境や立体的環境の大きく異なる錯体のライブラリーを構築した。さらに、合成した錯体とアゾ化合物を反応させることにより、酸化還元活性配位子に特有の反応挙動を観測した。以上の研究成果は、Journal of the American Chemical Societyに学術論文として発表した他、複数の学会・シンポジウムにおいて発表した。 研究課題② : 研究課題①において確立したタングステン錯体に対する酸化還元活性配位子の導入法をイミドタングステン四塩化物に適用し、錯体合成を行った。得られた錯体はジベンジルマグネシウムでジアルキル化することができ、さらにそのジアルキル錯体をPMe_2Ph存在下で加熱することによって目的とする酸化還元活性配位子を有するタングステンアルキリデン錯体の合成と単離に成功した。本研究成果は複数の学会・シンポジウムにおいて発表しており、現在、学術論文として準備中である。
|