生体内におけるK+濃度は細胞外では約5 mM、細胞内では約100 mMであることが知られている。したがってK+濃度に応じて活性を切り替えることが可能な機能性核酸は自身が細胞内および細胞外のいずれに存在しているのかを感知し、存在場所に応じて自らの活性をスイッチングし得る。このような機能性核酸は医療用アプリケーションや様々な分子ツールへの応用が期待できる。これまでに我々はGGA繰り返し配列をもつRNA (R11)がK+存在下でコンパクトな四重鎖構造を形成することを見出し、この構造変化を利用してK+依存的にハンマーヘッド型リボザイムの活性をスイッチ可能な四重鎖リボザイム(QHR)を開発した。本年度はR11を用いてK+依存的に活性を制御する手法をリボザイム以外の機能性核酸へ拡張するためにHIVウイルスのTatタンパク質を捕捉するRNAアプタマーを2つのドメインに分割し、これらのドメインをR11の両末端にそれぞれ連結することで、四重鎖Tat捕捉アプタマー(QTAp)を開発した。QTApはK+非存在下ではTatの部分ペプチドを結合する活性を持たないが、K+存在下ではTatペプチドを結合する活性を発揮した。加えてQTApは細胞外に高濃度存在するNa+では活性化されずK+特異的に活性をスイッチできることを見出し、細胞内外における活性スイッチングに適した性質を持つことを示した。またNMR法を用いてQTApがK+濃度の増加に応じて四重鎖構造を形成しており、意図したとおりの設計に成功していることを示した。これらの結果から本手法がリボザイムのみではなく様々な機能性核酸へと拡張可能な汎用性の高い手法であることを示した。
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