研究課題
本研究の目的は、日本人英語学習者が英文全体のテーマを理解するプロセスを理論的・実証的に検証することである。今年度は、「説明文読解における方略的なテーマ理解」を検証課題とし、実験を実施した。説明文読解におけるテーマ理解を検証するために、テーマ理解を方略的に行わせる「読みの目的」の効果を検証した。また、読みの目的と読み手の第二言語読解熟達度の関わりにも焦点を当てた。68名の日本人大学生を(a)テーマ理解条件 : テキスト全体を通して書き手が伝えようとしているメッセージを考える、(b)統制条件 : テキストの内容を理解する、という2つの読みの目的に割り当てた。テキストを読解後に、テーマ理解課題と筆記再生課題を行った結果、読解条件間で有意な差は見られず、読解条件に関わらず高熟達度群が低熟達度群よりも課題の成績が良かった。さらに、テーマ理解課題の解答を質的に分析した結果、テーマ理解に失敗する読み手は、パラグラフ単位のメインアイディアをテキスト全体のテーマととらえている傾向にあった。日本人英語学習者は、テキストの広範囲にわたる情報の統合が困難であることが示唆された。読解条件間でテーマ理解に差が見られなかったため、今後はより効果的な教育的介入を含む実験群を想定した実験を実施予定である。次年度は、読解中に起こるテーマ理解プロセスを詳細に検証するための実験を実施予定である。そのための予備実験として、説明文読解中の発話プロトコルデータを収集する予備実験を実施した。日本人大学生10名に、テーマ理解の教示がある条件とない条件とで説明文を読解させた。その際、自身の思考を発話させながら読解をさせた(発話思考法)。発話プロトコルデータの分析結果をもとに、実験手法や分析方法を改良した後、次年度に本実験を実施する予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通り、実験実施等の進捗がある。また、研究成果は、口頭発表や研究論文として発表され、一定の評価を得ている。
2年目の研究では、説明文読解における、オンラインでのテーマ理解プロセスを検証する。具体的には、読解時間測定法や発話思考法を用いて、日本人英語学習者が説明文を読解中にどのようにテーマを構築するのかを観察する。また、テーマ理解プロセスに必要な読解処理を調べるために、読解中に読み手が用いるストラテジーにも注目する。これら一連の研究において、学習者の第二言語読解熟達度の影響も、要因として考慮する。
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