研究課題
本研究の目的は、日本人英語学習者が英文全体のテーマを理解するプロセスを理論的・実証的に検証することである。2年目にあたる本年度は、「英文読解におけるテーマ理解にともなう認知プロセスの検証」を課題とし、日本人英語学習者が物語文・説明文のテーマを理解する際に、どのような認知プロセスを要するのかを明らかにした。説明文を用いた実験では、30名の日本人大学生が2つの説明文について、統制条件(テキストの内容理解を目的とした読み)とタスク条件 (各パラグラフを読解するごとにテーマ理解タスクがある読み) で読解を行った。その際、1文ごとに読解中に心内で何を考えているかを報告する「発話プロトコル法」を用いた。新近性効果を防ぐための干渉課題を行った後、テキスト内容で覚えていることをすべて書き出す筆記再生課題を行った。協力者の発話を分類した結果、タスクの有無にかかわらず、学習者の認知資源は語や文の分析に多く割かれており、テキスト内の情報を統合する推論や、テキスト内容に対する評価・反応などの割合は限られていた。一方で、タスク条件では統制条件よりも読解後のテキスト理解度が高かった。これらの結果から、学習者は与えられたタスクに応じて読解中のプロセスそのものを変化させることは難しいものの、タスクに従事する中でテキスト情報を大局的に処理した結果、最終的に構築された心的表象の一貫性が高まったことが示唆された。物語文を用いた実験では、30名の日本人大学生を対象とし、4つの短い物語文の半数を統制条件、残り半数をタスク条件で読解した。前述の実験と同様、発話プロトコル法、干渉課題、筆記再生課題の手順を行った。筆記再生課題を採点・分析した結果、タスク条件では統制条件よりも有意にテキスト理解度が高くなっていた。発話プロトコルデータについては、現在分析中である。
2: おおむね順調に進展している
研究計画通り、実験実施等の進捗があった。研究成果は、口頭発表や研究論文として発表され、一定の評価を得ている。
3年目は、これまでに実施した実験の結果をふまえて、特に (1) 物語文と説明文読解におけるテーマ理解プロセスの共通点・相違点、(2) テーマ理解を促すタスクが読解中の処理や読解後のテキスト理解に与える影響、(3) 学習者の英語熟達度とテーマ理解プロセスの関わり、などの観点から総合考察を行う予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
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