本研究の目的は,日本人英語学習者が英文全体のテーマを理解するプロセスを理論的・実証的に検証することである。3年目にあたる本年度は,補足データの収集 (テーマ情報とその他のテキスト情報が,読解後の心的表象にどのように反映されるか) と総合考察を行った。 今年度前半には,暗示されたテーマ情報と,その他の暗示情報の理解を比較した実証研究を行い,英語学習者の読解におけるテーマ理解プロセスをより詳細に明らかにした。結果から,英語学習者は物語文中に暗示されたテーマを推論によって理解することが難しいことが確認された。また,暗示されたテーマは,暗示された登場人物の感情よりも理解度が高く,暗示された登場人物の目標・行動・状態に関わる情報と同程度に理解されていることも示された。 今年度後半には,1年目の研究課題である「説明文読解における方略的なテーマ理解の検証」,2年目の研究課題である「英文読解におけるテーマ理解にともなう認知プロセスの検証」にかかわる複数の実験結果をふまえて総合考察を行った。具体的には,「物語文読解と説明文読解におけるテーマ理解プロセスの共通点・相違点」「テーマ理解を促すタスクが読解中の処理や読解後のテキスト理解に与える影響」「学習者の英文読解力とテーマ理解プロセスの関わり」という3つの観点から考察を行った。 本研究課題の主要な発見は,以下の3点にまとめられる: (a) 物語文読解と説明文読解におけるテーマ理解は,英語学習者の読解において自動的に起こるプロセスではなく方略的な処理によって引き起こされるものである,(b) 説明文はタスク教示よりも学習者の英文読解熟達度の影響を受けやすく,物語文読解は英文読解熟達度よりもタスク教示の影響を受けやすい,(c) 英語学習者は物語文と説明文の両方において,タスク教示に応じて読みの目的を変化させようとする。
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