研究課題/領域番号 |
13J00945
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森下 裕貴 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ナノマテリアル / ナノメディシン / DDS / 胎盤 / 銀 / 白金 / 誘導結合プラズマ質量分析計 / イオン |
研究概要 |
本研究の目的は、胎盤の機能改善により流産や早産等の根治を可能とする、『胎盤ターゲティング療法』を確立するべく、医薬品を胎盤特異的に送達可能な、ナノ胎盤キャリアを創製することである。当該年度は、ナノ胎盤キャリアの創製を目指し、ナノマテリアルの胎盤移行性と物性の連関情報の抽出を試みた。当該年度は、胎盤移行量の定量的な評価手法を確立済みである、ナノ白金やナノ銀を用いた。まず、粒子径の制御により、胎盤への移行性がどのように変化するかを評価する目的で、粒子径が異なる2種類のナノ白金(1㎚のものと8㎚のもの)を妊娠後期のマウスに静脈内投与し、胎盤中の白金量を誘導結合プラズマ質量分析計により評価した。その結果、いずれのナノ白金を投与した母体の胎盤でも白金が検出され、ナノ白金が胎盤へ移行することを明らかとした。また、1㎚のナノ白金を投与された妊娠マウスの胎盤では、8㎚のナノ白金を投与された妊娠マウスの2倍程度の白金が同定され、粒子径を減少させることで、胎盤への移行性を向上できることを見出した。次に、素材の変更により、胎盤への移行性がどのように変化するかを評価する目的で、10㎚のナノ銀を妊娠後期のマウスに静脈内投与し、胎盤中の銀量を評価した。その結果、サイズがほぼ同等である8㎚の白金と比較して、ナノ銀は10倍以上、胎盤への移行率が高いことが示唆され、素材を変更することで、胎盤への移行性を大きく制御可能であることを見出した。また、銀イオンを静脈内投与した母体の胎盤では、10㎚のナノ銀を投与した母体の胎盤と比較して、銀濃度が低値を示したことから、ナノ粒子化することが、胎盤移行性の向上に重要である可能性を明らかとした。以上のナノマテリアルの胎盤移行性と物性の連関情報は、ナノ胎盤キャリアを創製する上での基盤情報として有用と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、ナノ白金やナノ銀を対象素材とした胎盤移行量の定量解析を通じ、粒子径を減少させることで、胎盤への移行性を向上できること、素材を変更することで胎盤への移行性を大きく変化できることを見出し、ナノマテリアルの胎盤移行性と物性の連関情報を抽出した。このように、胎盤デリバリーシステムの確立に向けて、着々と情報を蓄積しており、当該年度は期待通りの研究の進展が認められたと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1年目で高い胎盤移行率が認められたナノマテリアルの全身各所での安全性を、当研究室が確立しているナノマテリアルの安全性評価法(一般毒性・免疫毒性・遺伝毒性・生殖発生毒性試験等)により評価する。1年目の成果と合わせ、ナノマテリアルの構造-動態-安全性相関を明確にするとともに、有効性と安全性を具備したナノ胎盤キャリアを創製・同定する。上記により見出した、ナノマテリアルを用い、薬物複合体を作成し、複合体作成条件等、胎盤デリバリーシステムの最適化を進める。具体的には、免疫制御活性を有する蛋白質や胎盤への感染性を有する病原体関連抗原等のバイオ医薬とナノ胎盤キャリアとの複合体を作成する。その後、薬物の吸着・内包・放出効率等の基礎物性を評価するとともに、妊娠マウスへ投与し、胎盤へのデリバリー効率・薬効・安全性等を評価する。これらの項目を指標に複合体作成条件(pH、混合率、作用温度、或いは作成手法等)の最適化を図る。
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