研究課題/領域番号 |
13J00982
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浦田 悠子 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ドーパミン神経の再生 / 比較解析 |
研究概要 |
本研究は、再生能力の高いイモリでドーパミン神経細胞の再生機構を解明し、再生能力の低いカエルやホ乳類で再生を可能にさせることを目的とする。 平成25年度の研究計画では、1. イモリとカエル双方で共通に用いることができる抗体をスクリーニングし、異種間での比較解析を容易にすること、2. トランスクリプトーム解析から得た遺伝子の配列情報を用いて、抗体が使用できない遺伝子に対して発現解析を行えるようにすること3. 神経毒6-OHDAを用いたイモリにおけるドーパミン神経細胞の再生過程を詳細に記述すること、の3つの点に重きをおき研究を遂行した。以下にその成果を示した。 1. ホ乳類で用いられている神経幹細胞および神経前駆細胞、ドーパミン神経細胞、幼若および成熟神経細胞を標識する抗体をイモリとカエルの双方でスクリーニングした結果、いくつかの幹細胞マーカーや神経細胞マーカーはどちらかでしか検出されなかったが、神経幹細胞マーカーのSOX2やドーパミン神経マーカー、オリゴデンドロサイトマーカーで共通に用いることのできる抗体を得ることができた。 2.2種のイモリ(アカハライモリとイベリアトゲイモリ)についてトランスクリプトームデータから様々な神経関連遺伝子を同定することができた。2種のイモリとカエルの遺伝子の比較から、相同性が高い領域を同定することができ、mRNAの発現解析を高い信頼性で行えるだけでなく、抗体のエピトープの選別にも役立った。 3. 神経毒6-OHDAを用いて、アカハライモリおよびイベリアトゲイモリの幼生のドーパミン神経細胞の再生過程を解析したところ、想定していたよりも早期のドーパミン神経の細胞体の再生を示唆するデータを得た。また、脳の一部を手術で除去して再生させる実験でも、脳室面に並ぶ神経幹細胞がいち早く脳室面の傷口を埋める様子が確認できた。これにより、細胞体の再生がイモリでは容易に起こりえることが示唆され、再生できない生物との脳組織の比較解剖学的な視点が必要とわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
用いられる抗体や遺伝子情報などのツールや、染色法・イメージング方法については明らかな充実がみられた。しかし、ドーパミン神経再生の実験系が異種間、または同種間の幼生と成体で均一になっておらず、比較解析をする際の障壁となっている。
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今後の研究の推進方策 |
ドーパミン神経細胞の細胞死をアポトーシス検出法であるTUNEL法や活性型Caspase-3の抗体染色を用いて検出し、異種間・同種間の幼生と成体の間で比較解析する。これにより、再生前の段階をそれぞれの生物間で基準化し、その後の再生開始時期や再生の程度を比較していく。また、薬剤を用いた実験だけではなく、手術によってドーパミン神経細胞の再生元である神経幹細胞ごと除去し、イモリでドーパミン神経細胞の再生に寄与する幹細胞に制限があるのかを解析する。
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