研究課題/領域番号 |
13J00993
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
福本 景太 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 自閉症 / シナプス / 過剰形成 / 過剰除去 / in vivo imaging |
研究概要 |
本年度は、自閉症患者において異常頻度の高い染色体異常であるヒト15番染色体qll-13領域重複のモデルマウス(以下、patDp/+マウス)におけるシナプスの過剰形成、過剰除去の異常原因を探索するため、下記の研究を行った。 1. 重複領域内に存在する遺伝子をクローニングし、過剰発現用プラスミドを作製した。 2. patDp/+マウスでみられる重複遺伝子の発現上昇を模倣するため、1で作製したプラスミドをin utero electroporation法を用いて大脳皮質の第II/III層の錐体神経細胞に導入した。その後、patDp/+マウスでシナプス動態の異常が見られた幼少期において、本サンプルのin vivo imagingを行い、二日間におけるシナプス動態を計測した。 結果として、重複領域内遺伝子であり. 父性由来染色体より発現するNdnの発現上昇がシナプスの過剰形成を引き起こすことが明らかとなった。また、同様に重複領域内遺伝子であるSnrpnの発現上昇がシナプスの過剰除去を誘発することを示唆するデータが得られた。 その他の重複領域内遺伝子のシナプス動態への関与については検討中であるが、patDp/+マウスにおいてシナプスの過剰形成、過剰除去が同時に見られていることから、本異常が少なくとも上記二つの遺伝子の影響を同時に受けているために生じていると考えられる。 上記した遺伝子のシナプスへの影響については未だ報告が無い。また近年の報告で、いくつかの自閉症モデルマウスにおいてpatDp/+マウスと同様なシナプス動態異常が見られていることから、本異常が多数の原因遺伝子から成る複雑な自閉症における、一つの共通した異常に成りえると考えられる。以上より、これら遺伝子の機能解析を行う事で、自閉症における共通異常の機能解明に成りえると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技術的に難しいと思われていたthinned skull法を用いたin vivo imagingも順調に進める事ができるようになり、当初予定していたシナプス動態異常に関する原因遺伝子の探索も着々と進展していることから、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として、まずシナプス動態に異常をもたらす原因遺伝子の探索を終了する。そして、この原因遺伝子がどのような機能を用いてシナプス動態に影響を及ぼしているのか、それにより神経細胞にどのような性質変化が生じているのかを明らかにするため、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析やパッチクランプ法を用いた電気生理学的なアプローチを用いて解析していく予定である。
|