研究課題/領域番号 |
13J00996
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古屋 淳史 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 急性骨髄性白血病 / DNMT3A |
研究概要 |
1. DNMT3A変異による造血幹細胞分画の割合増加をもたらす標的遺伝子の同定 空ベクター、野生型DNMT3A、変異型DNMT3Aをそれぞれ過剰発現した造血幹細胞においてマイクロアレイ技術を用いて網羅的に遺伝子発現プロファイリングを行ったところ、Hoxb群の遺伝子発現が亢進し、また骨髄球系分化関連遺伝子(PU.1、Cebpa)の遺伝子発現が低下していることが明らかとなった。次に同じ分画の細胞から抽出したゲノムDNAを用いて、バイサルファイトシーケンスを行ったところ、Hoxb群ではプロモーター領域において変異型DNMT3A導入造血幹細胞で低メチル化状態を認め、発現の変化と相関を認めた。一方PU.1ではプロモーター領域のメチル化には変化は認められなかった。以上の結果よりDNMT 3A変異により①Hoxb群で示されたようにメチルトランフェラーゼとしての機能が低下し標的遺伝子の発現が亢進する、および②PU.1で示されたようにDNAのメチル化とは独立したメカニズムによって標的遺伝子の発現が低下する、という2つのメカニズムの共在が示唆された。 2. DNMT3A変異による標的遺伝子のエピジェネティックな変化の解析 DNMT3AとPRC1複合体との協調関係が変異により増強されるという実験結果を踏まえ、PU.1がDNMT3AとPRC1複合体の直接の標的であるか調べるために、DNMT3A野生型もしくは変異型を導入したヒト急性骨髄性白血病細胞株を用いてクロマチン免疫沈降法および定量PCRを行った。すると、PU.1のUpstream regulatory element領域でDNMT3A自体のリクルートに変化を認めなかった一方で、RING1BやBMI1といったPRC1複合体構成蛋白がDNMT3A変異導入細胞株で同部位においてよりリクルートされていることが明らかとなった。加えて同部位におけるH2Aユビキチン化も変異導入細胞株で亢進しており、以上の実験結果からDNMT3A変異によってPU.1の発現がPRCI複合体のリクルートを介して抑制されていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初における平成25年度の研究目標を十分に達成しており、その他にも平成26年度分の研究計画への導入部分や必要物品の準備も終了していることから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1. DNMT3A変異の標的遺伝子の造血幹細胞分画増幅における役割の検証 DNMT3A変異の下流標的遺伝子候補に対してDNMT3A変異による造血幹細胞分画の増幅能獲得に機能的に重要であるか検証する。 2. 生理的レベルにおけるDNMT3AとPRC1複合体との協調関係の解析 BMI1ノックアウトマウスの骨髄細胞を用いて、DNMT3A変異による造血幹細胞分画の増幅能獲得にPRC1複合体が機能的に重要であるか検証する。 3. DNMT3A変異を有する白血病モデルを構築する。
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