研究概要 |
本研究の目的は, 低希薄度気体の振舞いを記述する一般すべり流理論を非定常系へと拡張し, 応用を行うことである. 一般すべり流理論によると, 気体の振舞は大域的には流体力学的方程式と所定の適切なすべり境界条件で記述でき, 境界近傍の薄い層(クヌーセン層)ではすべりに付随したクヌーセン層補正が加わる. 一般すべり流理論は, すべり境界条件及びクヌーセン層補正の構造をクヌーセン数(気体分子の平均自由行程と系の代表長の比)の2次の寄与まで明らかにしているが, 種々の2次クヌーセン層補正の具体的な値はボルツマン方程式の簡易モデルであるBGKモデル方程式以外ではほとんど得られていない. そこで, 平成25年度はボルツマン方程式の2次クヌーセン層問題の数値解法の構築に取り組んだ. 2次クヌーセン層問題は数理的に微妙で複雑な問題を含んでおり従来の直接差分による解法で高精度な解を得ることが難しいため, まず, 解の構造を半解析的に把握できるというボルツマン方程式の積分形の利点を活かした新たな解法の設計を行った, そして, その解法の有効性については, 既往研究の存在するBGKモデルの2次クヌーセン層問題に適用し, 既往研究の結果とよい一致を得るという形で確認できた, しかし, その次に, 目的であるボルツマン方程式のクヌーセン層問題に解法を適用したところ, 満足な精度の解を得られなかった. これは, BGKモデルとボルツマン方程式の間で形が異なる衝突項について, 当初は同程度のやさしさで扱えると想定していたのに反して, 実際にはボルツマン方程式の場合はより精密な扱いを要することが判明したためである. その後, 改めて対策を施した解法を確立し, 問題点は解決できた. 現在は, この解法を用いてデータを収集している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モデル方程式を用いた予備計算に基づく当初の予測に反して, 目的であるボルツマン方程式の2次クヌーセン層問題の計算には様々な工夫が必要になることが判明し, その後, 対策を施した解法を確立するのにやや時間を要した. 現在は, 計算上の問題点は解決できており, データを収集している.
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今後の研究の推進方策 |
全体の研究計画を変更する必要はないと考えている, まずは, 現在の解法を用いて2次クヌーセン層の十分なデータを収集し, 2次すべりの枠組みを完結させることに注力する, その後, すべり流理論の応用に取り組みたい.
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