特別研究員申請書において、消失した「年中行事絵巻」原本と模本との間で生じている問題点を以下の4項目に大別し、段階的に解決するとした。 【A. 場面順序の研究について】 中心となる模本と参考作品のデータ収集は終了した。現存模本の多くが住吉本の又写しであったため、主に住吉本図像に含まれる錯簡について調査した。 現在は、模本制作者(如慶・具慶)筆で住吉本と関連する創作作品の資料を探している。参考作品の調査では「伴大納言絵詞」と芸大I本「年中行事絵巻」を熟覧した。 【B. 場面構成の研究について】 現在、復元下図を制作している。 【C. 模写精度の研究について】 研究の軸となる住吉本の模写態度や制作工程に関して考察を行った結果、如慶らが原本図像の記録を目的として住吉本を制作した意図が汲みとれた。 一方で住吉本図像の描写を考察した結果から、住吉本および原本の制作時の制作工程について独自の推測を立てるに至った。料紙の製作・加工については、気象の影響を受けて遅延している。 【D. その他について】 現在、論文を執筆中である。
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