特別研究員申請書において、採用期間2年間で遂行する研究内容は消失した「年中行事絵巻」原本と模本との間で生じている問題点を以下の4項目に大別し、段階的に解決するとした。本稿では研究開始当初の計画を参照しながら変更箇所を反映し、以下の4項目に絡めて実施状況を報告する。 《A.場面順序の研究》中心となる参考資料の収集は終了した。現存模本の多くが住吉本の又写しであったため、主に住吉本図像に含まれる錯簡について調査した。参考作品の調査では「伴大納言絵詞」と芸大Ⅰ本「年中行事絵巻」、京都・陽明文庫Ⅰ本「年中行事絵巻」を熟覧した。 《B.場面構成の研究》図像修正方法を決定し、復元図像の下図を作成した。 《C.模写精度の研究》住吉本の模写態度や制作工程に関して考察を行った結果、如慶らが原本図像の記録を目的として住吉本を制作した意図と模写精度の高さを検証できた。さらに、住吉本の描写には原本の作画条件が異なる図像や単純な写し間違えが含まれることも検証によって確認できた。よって住吉本図像から、原本が複数の絵師が制作した複数の部分的な下図を組み合わせて料紙に転写して制作した工程が想定できた。 《D.その他》平成26年12月に研究発表を終え、現在は論文提出に向けて最終調整を行っている。
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