研究課題
食物網は生態系の中で物質やエネルギーの流れを規定しており、その研究は生態学の中で最も重要なテーマの1つである。陸域と水域とをつなぐ河川生態系において、生物の餌起源の指標となる炭素安定同位体比は、小さなスケールで大きな変動を示す。一方、栄養段階の指標となる窒素安定同位体比は、生物分類群間で分別係数が異なることが知られている。このような従来手法の問題点を克服し、河川食物網を高精度に解析するためには、新たな指標の開発・応用が必要不可欠である。本研究では琵琶湖流域の河川において、溶存無機炭素、溶存有機炭素、粒状有機炭素の各画分の炭素安定同位体比(δ13C)および放射性炭素14天然存在比(Δ14C)を測定した。また、河川バイオフィルムから藻類のバイオマーカーであるクロロフィルaを抽出し、炭素・窒素安定同位体比(δ13C, δ15N)およびΔ14Cを測定することで、河川一次生産者に由来するエネルギー流を追跡できる新しい指標を開発することを目指した。さらに、河川食物網解析の解像度をさらに上げるべく、アミノ酸ごとに放射性炭素14濃度を測定する手法の開発に着手した。各種炭素画分のδ13CおよびΔ14Cの研究については、論文として発表した。また、クロロフィル同位体指標の研究についてはデータが出揃い、河川の一次生産者からのエネルギー流を正確に定量するという、河川生態学的に重要な成果が得られた。現在、学術論文の投稿を準備中である。アミノ酸14Cの研究については、分析条件の検討がほぼ終わり、あとはデータを生産していけばインパクトのある成果が生まれるものと考えている。国際誌へ主著1報、共著1報の論文発表の成果をあげた。
2: おおむね順調に進展している
河川試料のクロロフィル同位体データを量産し、論文が投稿間近である。また、動物試料のアミノ酸14C分析手法を確立し、データを量産できる体制を整えた。査読付き国際誌へ主著1報、共著1報、学会発表5件の成果をあげた。
平成26年度までに確立した研究手法・分析体制を用い、データを量産して論文を執筆する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Radiocarbon
巻: 57 ページ: 439-448
10.2458/azu_rc.57.18348
Ecology and Evolution
巻: 4 ページ: 2423-2449
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http://www.jamstec.go.jp/res/ress/ishikawan/index.html