研究実績の概要 |
「研究目的」 C 型肝炎研究の障害の一つとして適切な感染モデルがないことが挙げられる。本研究ではこのブレイクスルーを目標として、新世界ザル指向性 HCV/GBV-B キメラウイルスの構築を目指している。 「研究実施状況」 1.HCVまたはGBV-B E1, E2発現レンチウイルスベクターを用いたシュードタイプウイルスの作製(in vitro) 昨年度までに、HCVのE1, E2タンパクを発現するシュードタイプウイルス (HCVpp) の作製に成功した。だが、GBV-BのE1, E2タンパクを発現するシュードタイプウイルス (GBV-Bpp)の作製には至らなかった。この原因としては、GBV-B E1, E2遺伝子コドンがウイルス由来であるために、哺乳類細胞では発現できないもしくは著しく低い可能性が考えられた。そこでヒトへコドンの最適化を行うために、オプティマイズしたGBV-B E1, E2を設計し、外部委託にて作製を依頼した。現在は最適化したGBV-B E1, E2を基にタンパクの発現を確認している。 2.GBV-B/HCVキメラウイルス感染実験 (in vivo) 3頭のコモンマーモセットに5'UTRからE2までをHCVに置き換えたウイルス (GBuE2) およびcoreの途中からE2までをHCVに置き換えたウイルス (GBcHCE12) を接種させたところ、最長24週まで血漿からウイルスが検出された。肝炎マーカーであるALT値においてはわずかに上昇が認められた。しかし抗core抗体価を測定したところ、上昇は認められなかった。以上のことから、接種したキメラウイルスはマーモセット体内で増殖可能であることが強く示唆されたが、持続感染にはさらなる改良が必要であることも判明した。
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今後の研究の推進方策 |
HCVまたはGBV-B E1, E2発現レンチウイルスベクターを用いたシュードタイプウイルスの作製(in vitro)では、レポータージーンとしてこれまではNanoLucを用いていたが、これを用いた検出系は細胞によってはバックグラウンドが高く感染の評価を正しく行えないことが判明した。よって現在はHCVまたはGBV-BのE1, E2を発現した細胞とヒト肝細胞またはマーモセット肝細胞の結合を測定する方法(Fusion assay)にて評価する系の確立を試みている。 GBV-B/HCVキメラウイルス感染実験 (in vivo)では、新たに設計したキメラウイルス3種を作製中である。このキメラウイルスが前回のウイルスと大きく異なる点はHCVのp7を挿入している点であり、HCVのp7はGBV-Bのp7と互換性があり、置換したキメラウイルスはマーモセットへの感染が成立することはすでに確認されている。また、p7を含む構造タンパクをHCVへ置換したキメラウイルスが長期にマーモセットで感染する報告もあり、本研究で用いているHCV TPF1株でも同様の成果が期待できる。今後はこのキメラウイルスを作製しマーモセットへ感染させ、ウイルス動態やALT値、抗体価を測定する予定である。
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