本年度は、前年度に集中的に発表した論考の成果を踏まえつつ、新たに資料収集・調査の蓄積にカめる年であった。前年度の研究過程において発見した大規模コレクションの調査や、一定のテーマにもとづく資料群を系統だてて博捜する作業が中心となった。具体的に調査した資料群のうち、代表的なものは次の通り。 明治~昭和前期にかけて活躍した文学者・吉井勇の、書簡と原稿を含む大規模コレクションである京都府立総合資料館所蔵吉井勇文庫。明治期における重要な口語資料である演説資料の、網羅的コレクションである東京大学法学部明治新聞雑誌所蔵演説関係書・東京大学文学部国語学研究室所蔵松村文庫。東日本大震災の被災資料として出現した、近代文学肉筆資料の大規模コレクションである宮城県亘理町郷土資料館江戸清吉文庫。 以上の重要資料の調査・考証を通じて、文学における近世期から近代期への史的変遷を捉えるための、重要な視座を開くことができた。
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