研究課題
当研究員は、融解に伴うルビジウムの構造変化がプラズモンの励起エネルギーにどのように影響するのかを、電子状態密度、誘電関数から考察し、実験で見られた固体、液体ルビジウムにおける分散関係の違いを考察した。さらに、固体と液体の間に見られたプラズモン線幅の差異も、構造変化に着目して説明した。これらの融解に伴う変化は、液体ルビジウムの価電子の方が固体ルビジウムよりも電子ガスモデルでよく記述されることを示唆していた。この傾向は、液体状態を利用することは、電子ガスの性質を議論する上で有効であることを示し、今後の低密度領域での実験に対して有意義であると言える。この結果は、Physical Review B誌にて公表した。融解に伴う線幅の変化を考察する過程で、当研究員は、液体金属のプラズモン線幅を長波長極限において評価する式を導出した。結晶状態におけるプラズモン線幅は、逆格子ベクトルを用いて計算されるのに対し、今回導出した式では液体の構造因子を用いるため、両状態での線幅の計算結果を比較することで、構造変化の影響を議論できる。導出した式により、実験で得られた融解に伴う線幅の変化は定量的に再現された。この結果は、Journal of Physical Society of Japanにおいて公表した。当研究員は、液体セシウムに対してもIXS測定を実施し、プラズモン分散を求めた。セシウムのプラズモン分散は、液体状態では、今回得られたものが初めてであり、固体セシウムで観測されている負のプラズモン分散の問題に対し、極めて貴重な情報を与えると考えられる。この結果は、国内の学会(日本物理学会)において発表した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では、ルビジウムの高温状態での実験を行った後、セシウムの実験を行う予定であった。しかし、高温のアルカリ金属を安定に保持するための試料容器の開発には十分な時間をかける必要があると判断し、先にセシウムの融点前後の実験に着手した。そのため、当初の計画とは順序が異なっているが、順調に進展していると言える。
今後の研究に向けて、高温のアルカリ金属に対し耐食性のあるモリブデン試料容器の開発を進める。現在、試料の厚み、試料を導入する機構、部品同士の溶接の工程などを考慮し、容器の設計を行っている。既に、共同で作業を行う業者とも連絡をとっており、今後の高温領域における実験に向けて、着実に準備が進展している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
Physical Review B
巻: 89 ページ: 014206-1-014206-6
Journal of Physical Society of Japan
巻: 82 ページ: 115001-1-115001-2
巻: 88 ページ: 115125-1-115125-7