研究概要 |
(1)研究成果の要約 研究目的 境界型糖尿病者において、慢性腎臓病に当てはまる者の割合が正常者と比較して多いのかを検討した。 研究方法 研究対象者はJA長野厚生連佐久総合病院の2日人間ドックを受診した30-79歳の地域住民8162名。75g経口ブドウ糖負荷試験より、対象者を糖尿病型5群[1. 正常、2. Impaired glucose tolerance (IGT)、3. Impaired fasting glucose (IFG)、4. IGT+IFG、5. 糖尿病]に分類した。慢性腎臓病を推定糸球体濾過量<60mL/min/1.73m^2 and/or尿蛋白1+以上と定義した。 結果 1~5群において、慢性腎臓病を呈した者の割合はそれぞれ14.0 (3.2)%、16.3 (4,5)%、17.2 (5.2)%、17.6 (7.6)%、19.2 (6.7)%であった(括弧内は尿蛋白1+以上の割合を示す)。慢性腎臓病に対する多変量調整後のオッズ比(95%信頼区間)は、IGT : 0.86 (0.71-1.03)、IFG : 0.98 (0.76-1.28)、IGT+IFG : 0.90 (0.67-1.20)、糖尿病 : 0.93 (0.70-1.25)であった。尿蛋白1+以上のみを従属変数にした場合、オッズ比はIGT : 1.28 (0.92-1.78)、IFG : 1.36 (0.87-2.12)、IGT+IFG : 1.91 (1.25-2.93)、糖尿病 : 1.63 (1.02-2.60)であり、IGT+IFG群において有意に尿蛋白を呈する者が多かった。 (2)研究結果の意義 2型糖尿病性腎症の臨床経過は糸球体濾過量が低下する前に尿蛋白が出現すると言われていることから、境界型糖尿病でより早期の腎症が存在すし、この時点での腎機能評価が必要である可能性があることが本研究の結果より示された。これは糖尿病性腎症発症の予防的対策を講じる上での重要な知見であると考える。
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