今年度は、前年度に引き続き、モザイク胚において、細胞競合が生じるメカニズムを明らかにすること、に取り組んできた。具体的には、薬剤(タモキシフェン)誘導型のCre/loxPシステムを利用し、導入遺伝子の発現細胞をモザイク状にもつ胚(モザイク胚)を作製した。導入遺伝子として、Rosa26遺伝子座から、Tead活性化型もしくはTead不活性化型をGFPと共に発現誘導し、さらに、正常細胞の指標とするため、同じ遺伝子座から核移行型mCherryを発現誘導した。実際には、これらのマウス胚(E7.5)を培養下で薬剤誘導して、モザイク胚を作製し、共焦点顕微鏡を用いて24時間程度のタイムラプス・ライブイメージングをおこなった。 その結果、Tead 活性化型、不活性化型共に、Tg細胞が出現するタイミングが、正常細胞に比べて遅く、誘導直後からTg細胞が排除されていることが予想された。そこで、誘導直後の胚をより詳細に観察していくと、細胞が断片化されて、組織内に取り込まれていくような現象が複数観察された。 また、遅いながらも出現してきたTg細胞が、その後どのような運命をたどるのか(排除されるのか否か)を確認するために、誘導4日後の胚(E6.5で薬剤投与し、E10.5で固定)でもTg細胞と正常細胞の割合を観察した。現在のところ予備的な結果ではあるが、Tg細胞の存在がある程度認められており、必ずしも全てのTg細胞が排除されるわけではないことが確認できた。このことから、研究計画で提案してきた、異質なものもある程度は許容する「細胞協調」の仕組みが備わっていることが示唆された。
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