研究課題/領域番号 |
13J01075
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金築 俊輔 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ハイパー核 / ストレンジネス / J-PARC / 磁気スペクトロメータ / チェレンコフ検出器 |
研究概要 |
本研究は、新規に製作している散乱粒子用磁気スペクトロメータS-2Sを用いることで、高エネルギー分解能、高統計で、(K-, K+)反応を用いたΞハイパー核の分光実験を行い、世界で初めて酬相互作用にっいての実験的確証を示すことが目標である。本年度は本研究の要であるS-2Sの電磁石の性能評価と粒子識別検出器の開発を進展させた。初段の四重極電磁石であるQ1は平成24年度末に完成し、磁場測定を行った。本年度は3次元磁場解析ソフトを用いた計算を行い、測定磁場分布を精度よく再現することに成功した。運動量解析への影響も見積もり、目標の5×10^(-4)に対して十分小さいことを示した。残りの四重極電磁石Q2と双曲電磁石D1についても、同様に高精度の磁場計算を行うことで、目標としている高分解能の測定を実現できる見通しを立てた。また、測定された磁場強度を元にシミュレーションを行って検出器配置を検討した結果、60msrという大立体角を実現でき、高統計のデータ取得が可能であることを示した。 検出器開発に関しては、特に陽子抑制用の水チェレンコフ検出器の開発を行った。本研究において、散乱陽子のトリガ・一段階での抑制は効率的なデータ取得のために非常に重要である。我々は、試作機を製作してJ-PARCでのビームテストと宇宙線実験を行って、光電子数の入射速度、入射位置・角度による依存性や、使用する反射材の比較等を行った。その結果、関心のある1.2~1.4GeV/cの運動量領域において、平均88%の陽子抑制効率を実現できるとわかった。また、他の粒子識別検出器TOFとACに関しても基本的な設計を行った。TOFに関しては検出器部品の製作まで行い、ACは既存のものを使用することにしたため、その保守・点検を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度末にQ2電磁石とD1の鉄芯が完成し、電磁石の製造は予定通り進んでいる。Q1については磁場計算による測定値の再現も高い精度で行い、運動量解析についての影響も見積もることに成功した。効率的なデータ取得に必要な粒子識別検出器の開発も進められた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度末に完成したQ2および来年度秋に完成するD1も含めた電磁石系の性能評価と詳細な磁場計算を行う。TOFを含む検出器系の設置架台と、水チェレンコフ検出器の実機の設計・製作に取り組む。これにより、粒子識別検出器群を完成させる。また、既存のドリフトチェンバーの改修・調整を行うことで位置検出器群の準備も行う。
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