研究課題/領域番号 |
13J01107
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
濱田 雄太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ヒッグス粒子 / インフレーション / R対称性 / ニュートリノ |
研究概要 |
今年度は超弦理論から導かれる4次元有効理論についての研究という研究課題のもと、超弦理論の模型からのトップダウン的に標準模型を出す試みと近年のヒッグス粒子発見からのボトムアップ的な高いスケールへの考察を行った。まず、トップダウン的な研究としては、私は交差するD-ブレーン模型という超弦理論の模型において、ニュートリノ質量の現れるパターンについて考察した。結果として、この種の模型においては理論には世代を回すZ3対称性が残っており、この対称性がニュートリノ質量の現れ方を強く制限することが分かった。特に、ニュートリノ質量混合行列はtri-maximalという形になり、これは実験と完全に一致はしないものの第一近似としては悪くない形である。 次に、ボトムアップ的な研究について報告する。昨年度の研究において観測されたヒッグス粒子の質量の情報をもとに、理論をくりこみ群という手法を用いて高エネルギーまで外挿すると、ちょうど重力が重要になるスケールであるプランクスケール付近において、ポテンシャルがフラットになることを明らかにした。今年度はそれに引き続き、このフラットなポテンシャルを利用すれば、ヒッグス粒子が宇宙初期のインフレーションを引き起こす源となれることを指摘した。この可能性は最近のBICEP2による重力波観測も説明することができ、非常に魅力的なシナリオである。また、超対称性模型においてR対称性を破ることで超対称性も破る模型における宇宙論的な制限を調べた. 結果として、最も軽い超対称性粒子が現在の暗黒物質のエネルギー密度を超えてはならないという条件から、理論のパラメーターに大きな制限がつくことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り、現象論的に完全とはいかないまでもかなりよいフレーバー構造を持つ模型を構築できた。 さらに、最近の光子宇宙背景放射の観測の発展をもとに、ヒッグス粒子がインフラトンである可能性がとてももっともらしいことも指摘できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も超弦理論から標準模型を出すトップダウン的なアプローチと実際の現象を説明するために超弦理論の模型にどんな性質が要求されるかを調べるボトムアップ的なアプローチの2点に取り組む. 特に, 前者においては超弦理論から軽いヒッグス粒子をいかに導き出すかを、後者についてはインフレーションや暗黒物質、バリオン数生成の理解を目指す。
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