本年度は,炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)の衝撃損傷を熱融着で修復することを目的に,その条件を模擬した試験下での融着部の挙動を検討した.これに関連する成果として,圧縮強度の回復に関する研究を論文として学術誌に投稿したほか,これまでの研究を「熱可塑性を利用した薄層化CFRTP積層板の衝撃損傷修復と圧縮強度の関係」と題する博士論文としてまとめ,学位を取得した.上記を含め,CFRTPの融着に関連する論文を2本投稿し,すべて受理された.また,国内会議で3件の発表を行った. CFRTPの熱融着時の条件と繊維・樹脂流動の間の関係に関して,融着時のCFRTPの挙動を観察することで,融点付近の融着でこれまで見られなかった現象が発生していることが確認できた.さらに,実験だけでなく数値解析による検討を加えることで,温度だけでなく圧力でも挙動が変化することを明らかにした.すなわち,以上の研究結果から,CFRTPの良好な融着を行うための条件が明らかになりつつある.これは次のステップである,融着条件と融着部の強度の関係を解明するための大きな足がかりである.研究計画に照らし合わせれば,今後は融着の条件によって,融着した場所の力学的な特性がどのように変化するのかを追求していく必要がある. 以上のように,期待通り研究が進捗していると判断する.なお,学術機関に職を得たが,引き続き熱可塑性樹脂を母材とする複合材料の研究に従事しており,CFRTPの熱融着に関する研究を継続している.
|