研究概要 |
本研究課題の最終目標である、フェムト秒時間分解CARS-ROA分光法の開発に向け、次の2点の装置開発、改良を行った。 1. 昨年までに原理検証実験に成功していた、ナノ秒マイクロチップレーザーを光源としたCARS-ROA分光装置を改良した。2012年に世界初となるCARS-ROA観測を報告した(K. Hiramatsu, et al, Phys. Rev. Lett. 109, 083901)が、時間分解分光への応用を考えるとその性能は十分であるとは言えなかった。そこで、まず、CARS-ROA信号をヘテロダイン検出する際に用いるローカルオシレータ(LO)の導入方法をself-heterodyne方式からactive-heterodyne方式に偏光することで装置の改良を試みた。結果として、感度の向上はみられなかったものの、旋光分散(ORD)に由来する偽信号の抑制に効果的であることを示した(K. Hiramatsu, et al., Opt. Express 21,13515)。次に、測定に用いる光源の波長を1064nmから532nmへと変更することで、信号強度の増加を試みた。結果として、532nmを励起光として用いることで、信号強度は飛躍的に向上し、同じ露光時間での信号雑音比(SNR)は1064nmの場合と比べて9倍も向上した。 2. フェムト秒の再生増幅器を光源とする、時間分解CD分光計を新たに開発した。時間分解分光の基礎として、まずは振動ROAよりも測定が容易である電子CDのフェムト秒時間分解測定装置の開発を行った。可視域全体をカバーする広帯域なフェムト秒パルスを光源としたCD/ORDスペクトルの同時測定に成功した。
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