本研究は、タンパク質合成過程におけるフォールディング機構を解明し、新生タンパク質のフォールディングモデルを提唱するものである。新生タンパク質はN末から順次折りたたまれることが出来るため、翻訳に共役して折りたたまれると考えられている。結晶構造解析の手法を用いて、リボソームの代わりとしてマルトース結合タンパク質に組み込んだ段階的に長さを変化させたモデル新生タンパク質(ペプチド)の構造を決定し、新生タンパク質のフォールディング過程に関する構造情報を得ることが目的である。 これまでに2種類のモデル新生タンパク質について、それぞれのタンパク質のフォールディングの中間状態を示していたが、本年度は得られた結晶構造の妥当性の検証を行った。円二色性スペクトル法を用いて、二次構造の割合に関して、濃度依存性がないことを示した。また、構造予測プログラムを用いて得られた結晶構造が実際の溶液中でも取り得る構造であるかを検討した。構造予測から得られた二次構造を形成している領域は、結晶構造から得られた構造で二次構造を形成している領域とほぼ同じであった。さらに、構造予測で得られた二次構造の割合は、円二色性スペクトル法から計算される二次構造の割合ともほぼ一致し、結晶構造や円二色性スペクトルの結果が妥当な結果であることを示した。新生タンパク質のフォールディングでは、変性状態からのフォールディングとは異なり、最も安定な構造を介して順にフォールディングしていくモデルを提唱することができた。
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