本研究は、培養液が流動可能な血管様構造体を有する組織体の構築法を開発することを目的とする。具体的には、まず、細胞包括微小中空マイクロカプセルを用い、中心部まで酸素や栄養分が十分に供給可能なサイズの球状組織体を形成させる(Step 1)。同時に、血管内皮細胞で表面を覆ったゲルファイバーを作製する(Step 2)。その後、各構造体の表面をさらに血管内皮細胞で覆って結合させた後(Step 3)、球状組織体と筒状組織体の鋳型であるヒドロゲル(カプセル膜・ゲルファイバー)を酵素反応で分解し(Step 4)、血管様流路構造を有する組織体を作製するものである。 今年度(平成26年度)では、Step 3-4について検討を行った。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)層で覆われたヒト肝臓がん由来HepG2細胞の球状組織体カプセル、およびHUVEC細胞層で覆われたアルギン酸ファイバーを作製した。次いでこれらの組織体をコラーゲンゲル内に集積し、3次元組織体の構築を行った。血管内皮細胞の遊走および管腔形成を促すサイトカインを培地中に添加することにより、球状組織体および管状組織体の間隙を接続する血管内皮細胞ネットワークの誘導を行った。その後、アルギン酸リアーゼを培地中に添加することにより、管状組織体および球状組織体の作製時にそれぞれの鋳型として使用したヒドロゲルを除去した。次いで直径3 μmの微粒子を含むPBS溶液をヒドロゲルファイバーの分解により形成した管状流路中に流入させたところ、血管内皮細胞ネットワークを通じて組織体の全体へ送達することができた。 以上の結果より、培養液などが流動可能な血管様構造体を有する三次元組織体の構築法の開発に成功した。
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