研究課題/領域番号 |
13J01135
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 一樹 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 三次曲面 / 有理点 / Selmer群 |
研究概要 |
本年度は、有理数体上の三次曲面の有理点について研究した。具体的には、有理数体上の任意の楕円曲線のTate-Shafarevich群の有限性を仮定したとき、有理数体上の対角的三次曲面に対して、それが有理点を持つための方程式の係数についての数値的な十分条件を与えた。この研究は、以下で述べるように、研究計画における「Brauer-Manin障害」に関するある予想の証拠の一つを提出している。 代数体上の代数多様体の有理点の存在が、局所的な有理点の存在に帰着されるとき、Hasse原理が成り立つと呼ばれる。一般に非特異射影的三次曲面に対してはHasse原理が成り立たないことが知られいるが、代わりに有理点を持つためにはBrauer-Manin障害が唯一つの障害であると予想されている。 Colliot-Thelene、Kanevsky、Sansucにより、Brauer-Manin障害が存在しないような対角的三次曲面のあるクラスが発見された。本研究で考えられた曲面は、このクラスの中でさらに特別な場合を扱っている。 この研究のアイディアのもととなる対角的三次曲面上の有理点の存在に関する結果は、Heath-Brownによりまず与えられ、BasileとFisherが同じ結果に対して別証明を与えている。我々の研究は主にBasileとFisherの手法に基づき、対角的三次曲面に付随するある楕円曲線のTate-Shafarevich群の有限性の仮定の下で、Selmer群の中からHasse原理を満たす曲線で代表される元を持ってくることにより証明がなされる。なお、BasileとFisherの手法を用いて、Swinnerton-DyerはHeath-Brownの結果を一般化しているが、我々の結果はSwinnerton-Dyerによる仕事には含まれない場合を扱っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」にある「二次超曲面束のChow群」に関してあまり進展はみられなかったが、「Brauer-Manin障害」に関して、三次曲面の有理点という観点から研究が進展したため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究を引き続き遂行する。二次超曲面束のChow群に関してはあまり進展がみられなかったので、今後は三次曲面の有理点、特に有理点の存在に関するBrauer-Manin障害について研究を進める。Brauer-Manin障害が存在せず、Swinnerton-Dyerの方法以外で有理点の存在が示せるような有理数体上の対角的三次曲面のクラスについて考察する。
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